2011年5月10日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
ジグソーパズルはひとつのピースが欠けても完成しません。自動車は２万点から３万点の部品のどのひとつが欠けても組み立てられません▼自動車大手８社の３月の国内生産台数は１年前と比べ５割以上減。各社とも１０日程度しか生産できなかったためです。理由は東日本大震災による部品の不足です▼「必要なものを､必要なときに､必要な数量だけ｣調達し､生産する。こうした在庫を可能な限りもたないトヨタ生産方式の危うさも露呈しました。安定調達に支障がある部品は１５０点とも５００点とも。下請けの裾野が広く、被災状況が掌握しきれないのが実情です。今回の震災ではじめて「この部品は東北地方の企業から調達していることを知った」というメーカー幹部も▼日本製部品の不足は、米自動車大手のゼネラル・モーターズ（ＧＭ）やフォード・モーターの一時生産停止などにも波及。海外メーカーにも影響は広がっています▼不足する部品は「海外から」「西日本から」調達すればいい、とはいきません。半導体・電子部品やゴム関連品など代替の調達先が見つからないと悲鳴をあげている企業が加工業種の実に５割に上ります。経済産業省の調査結果です。被災地には世界シェア（市場占有率）が４０％、１００％という企業もあります。代替がきかないのです▼大震災は、中小企業が日本のものづくりや雇用を支える「宝」だと改めて印象付けました。震災の復旧・復興における中小企業支援の位置付けが大切なゆえんです。
