2011年5月9日(月)「しんぶん赤旗」

陸山会事件 公判ヤマ場

裏献金疑惑 核心鮮明に


 「2回に分けて計1億円を渡した」―。民主党元代表の小沢一郎被告の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件での元秘書3人の公判が大きなヤマ場を迎えています。中堅ゼネコン「水谷建設」元社長が小沢被告側への裏献金提供を証言。小沢被告自身の責任が免れられない事態となっています。(「政治とカネ」取材班)


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(写真)水谷建設の社長(当時)が、小沢氏側に2回にわたって計1億円を提供したとリアルな証言をした舞台となった東京全日空ホテル(現、ANAインターコンチネンタルホテル)=東京都港区

1億円受け渡し 元社長が証言

 4月27日の東京地裁。石川知裕被告(現、衆院議員)と元公設第1秘書の大久保隆規被告が見つめる中で、水谷建設元社長の川村尚氏は、淡々と小沢氏側への計1億円の受け渡しを証言しました。

 証言によると、1回目の5000万円の受け渡しは2004年10月15日。東京・赤坂の旧全日空ホテルのフロント前ロビーで、1000万円の束五つを入れた宅配便の袋を手提げの紙袋に入れ、石川被告に渡したといいます。

 やりとりは「世間体を気にして」2、3分ほど。ソファーに座り「極力目立たぬようにスライドさせるように石川様に近づけてお渡しした」といいます。

 2度目は、05年4月中旬。同じホテル内の喫茶店で、相手は大久保被告でした。

 その時の様子を川村氏は「まず『お約束の品ですので、どうかお納めください』とテーブルの下で目立たぬようにお渡ししました。(大久保被告は)『ありがとうございます』ということだった」と証言しました。

 また、川村氏の証言で明確になったのは、公共工事での小沢事務所の絶対的な影響力でした。

 川村氏が社長になったばかりの03年11月に、訪ねたのは小沢事務所でした。

 その理由を聞かれ、「小沢事務所のお力は強く、反対されると下請けに参入できないと聞いておりました。一次業者として『認めない』といわれるのを阻止するために小沢事務所の方々に営業活動をいたしました」とのべています。

 法廷でウソを言えば偽証罪に問われる状況のもと、当事者の証言によってリアルに再現された1億円の裏献金の受け渡し。土地購入の原資はゼネコンの違法なカネではないのかとの詮索・追及から逃れるために虚偽記載を行ったという事件の核心が鮮明になりました。

「形式的ミス」の主張も破たん

 これまで10回を数えた公判で、小沢氏側の主張が破たんしてきていることも特徴的です。

 たとえば、小沢氏と公共事業受注企業との深い癒着関係です。

 大久保被告の本人尋問でのこと。裁判官からゼネコンからの受注依頼について聞かれた同被告は、東北地方の公共工事談合の仕切り役とされた鹿島の元東北支店幹部に対し、「『こういう話が来ているが、何とかお願いできないか』と頼んだ」と受注の働きかけをしていたことを証言しました。

 検察側は、大久保被告が、こうした口利きを背景に、ゼネコン献金を脅迫まがいに要求していたことを、ゼネコン幹部らの供述調書をもとに明らかにし、同被告も否定できませんでした。

 小沢氏や、小沢氏を擁護する人たちが、今回の政治資金規正法違反事件を「形式的ミス」などといって軽くみせようとしていることも、“身内”から覆されました。初公判での石川被告側の冒頭陳述です。

 問題の世田谷区の土地購入の際、銀行融資の担保となる定期預金を設定するための資金が必要だった小沢氏側は、関連政治団体から陸山会に1億4500万円の資金移動を行いました。

 冒頭陳述は、このことについて、「被告人石川にすれば、自分の上着の左のポケットから右のポケットに移し変えた程度の意識しか有していなかったのである」としました。

 政治資金規正法は、政治資金の収支の公開や授受の規正を通じて、「民主政治の健全な発達に寄与」することをうたっています。それを「ポケットの移し変え」程度の認識だったとは―。「形式的ミス」ではすまされないものです。

小沢被告本人が説明を

 小沢被告は、水谷建設元社長から1億円の裏献金を提供したという重大な指摘をされながら、詳細な事実を示してこれを否定する説明を行っていません。

 元秘書の政治資金規正法違反について小沢被告は「単純なミステーク」(3月3日の記者会見)などと、事件をわい小化すると同時に、自らは無関係という態度に終始してきました。

 しかし、公判で浮かび上がっているのは、誰が見ても「単純ミス」とはいえない、意図的で悪質な違法・脱法行為です。裁判官も元秘書の釈明に「合理的な考えでない」などと疑問を呈する場面が再三ありました。

 「すべてを小沢氏に相談し、報告するのが秘書の仕事」(小沢被告元側近)というように、小沢被告は秘書たちにとって絶対的な存在です。同被告の関与抜きに、裏金をごまかすための虚偽記載がおこなわれたとは到底考えられません。

 小沢被告は、自身の公判を口実に国会での説明をいっさい拒否していますが、同被告には、司法の場とは別に、公共事業発注に影響力を行使してきた実態と真相について、国民の前に明らかにする政治的・道義的責任があります。

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