2011年5月8日(日)「しんぶん赤旗」
原発事故の責任感欠如
東電の審査会への要望書
損害賠償に後ろ向き
東京電力の福島原子力発電所事故の賠償範囲を検討する原子力損害賠償紛争審査会に対して東電が提出していた要望書の詳しい内容が7日までに分かりました。
要望書は、同審査会が4月28日に賠償範囲に関する1次指針をまとめる3日前の同月25日に、東電の清水正孝代表取締役名で同審査会の能見善久会長あてに出されていました。
要望書は今回の原発事故について、「弊社としては、本件事故による損害が原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」といいます。)3条1項ただし書きにいう『異常に巨大な天災地変』に当たるとの解釈も十分可能であると考えております」と主張しています。
ここでいう原賠法の3条1項は、原発事故を起こした電力会社が免責される規定のことです。政府はすでに、今回の事故について、同法にもとづく免責には当たらないとの考えを示しています。この期に及んで、東電が福島第1原発事故の賠償責任が免責されるとの考えを自ら表明すること自体、史上最悪の原発事故への責任感が欠如していることを示しています。
要望書はまた、「国による援助の具体的な方策が確定していないことから、弊社としては、仮に1次指針が策定されたとしても、その全額の弁済をすることは早晩困難になると考えられる」としています。早期の被災者救済を求めた1次指針に対しても、仮払いを含めた早急な損害賠償には後ろ向き姿勢を示しています。さらに、「1次指針の策定に当たっては、当社の実質的な負担可能限度も念頭に置かれたうえ」で補償範囲を決めることを要求。これは、東電による負担限度額を想定するよう求めているもので、原発被害の全額賠償を否定するものとなっています。