2011年5月8日(日)「しんぶん赤旗」
主張
浜岡原発停止
原発震災の防止に全力つくせ
菅直人首相が、近い将来発生が予想される東海地震の震源域のほぼ真ん中にある、中部電力浜岡原子力発電所(静岡県)の運転停止を要請し、中電側も「迅速に検討する」と約束しました。
東日本大震災で重大な事故を起こし、いまだに収束のめどが立たない東京電力福島第1原発の惨状をまのあたりにすれば、世界でもっとも危険といわれる浜岡原発の運転停止は当然です。政府は原発震災から国民を守るために、浜岡原発の運転停止だけでなく、原発政策を根本から見直すべきです。
世界でもっとも危険な
浜岡原発が立地する静岡県御前崎市を中心とした一帯は、東海地方から四国地方の沖合の海底にある南海トラフ(海溝)沿いに発生する巨大地震のひとつ、東海地震の震源域です。政府の専門家も今後30年以内にマグニチュード(M)8程度の東海地震が発生する可能性は87%にものぼるとしています。東南海地震や南海地震などと連動する可能性もあります。東海地震の震源域の真ん中にある浜岡原発が、巨大地震と大津波に見舞われる可能性が高い、世界一危険な原発といわれたのは当然です。
もともと技術的に未完成で、地震や津波で外部電源などが断たれ、冷却機能を失えばコントロールが効かなくなる原発の震災被害の危険性は、福島原発事故で浮き彫りになりました。浜岡原発の近くには東海道新幹線や東名高速道路など、日本列島の東西を結ぶ大動脈が通り、東京・首都圏にも近いだけに、いったん事故を起こせば広範囲に大きな被害を及ぼすことが懸念されています。
浜岡原発がもともと建設を始めたときには東海地震の危険性がよく知られていませんでした。最初に作られた1、2号機はすでに廃炉にすることが決まっています。しかし、東海地震の危険が指摘されてからも政府と中電は建設を続けたため、周辺住民らが運転の中止を繰り返し要求してきました。運転中の原発が被災すればその被害は甚大です。定期点検で停止している3号機とともに、運転中の4、5号機についても一日も早く停止するのは当然です。
福島原発事故のあと、中電は新たに防潮堤の設置など、中長期の対策に着手しており、政府も運転停止はあくまでもその対策が実施されるまでの間だとしています。しかし、たとえ現在中電が計画している防潮堤などができても、予想される地震や津波の被害を完全に防げる保証はありません。運転を停止しても完全に危険がなくならないことも、停止中だった福島原発4号機などの例で明らかです。原発震災の被害を防ぐには、震源域の真ん中に立地するという世界にも異常な浜岡原発を存続させていいのかという、根本問題の解決を不可避にしています。
原発からの撤退決断を
しかも、ことは浜岡原発だけではありません。世界有数の地震国で津波の被害も多い日本で、海岸部に54基もの原発が集中立地している現状は明らかに異常です。
原発は「多重防護」の対策がとられているから安全だという「安全神話」は完全に崩壊しました。新たな原発震災を繰り返さないためにも、いまこそ政府は安全最優先の原子力政策に転換し、原発からの撤退を決断することが求められます。
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