2011年5月5日(木)「しんぶん赤旗」
検証 米軍「トモダチ作戦」
最大2万人動員 司令部一体化
同盟「深化」、普天間基地「移設」の“追い風”に
日米両政府は米軍による東日本大震災支援の「トモダチ作戦」を利用して、日米同盟「深化」や沖縄・米軍普天間基地「移設」を推進しようとしています。これまでの活動を検証すると―。 (榎本好孝、竹下岳)
3月11日の震災直後、在日米軍は「統合支援部隊」(JSF)を立ち上げ、支援活動(「トモダチ作戦」)を開始。地震・津波の被災者支援として最大時で人員2万人、艦船約20隻、航空機約160機を投入しました。(外務省資料から)
JSFの司令部は米空軍横田基地(東京都)に置かれ、米太平洋艦隊のウォルシュ司令官が指揮していました。(現在は在日米軍のフィールド司令官)
現地では山形空港、仙台空港や洋上の原子力空母ロナルド・レーガン、強襲揚陸艦エセックスなどが拠点となりました。
福島第1原発の事故対応として、消防車や防護服、原子炉冷却に用いる淡水約190万リットルなどを提供しています。米本土から海兵隊の放射能対処専門部隊(CBIRF)約150人を派遣しました。
福島には入らず
一方、米政府は福島第1原発から80キロ圏内を退避区域に設定し、同区域内での活動は制限されました。CBIRFも福島県内に入らないまま、任務を終えて帰国しています。
また、横須賀基地を母港とする原子力空母ジョージ・ワシントンは放射能の影響を避けるためとして、九州・四国沖に避難。4月5日、12日と2度、佐世保基地(長崎県)に入港しました。
4月上旬には部隊の大半が撤退しました。米政府による作戦の予算上限8000万ドル(約68億円)に近づいたためとみられます。
在沖縄海兵隊は第31海兵遠征隊(31MEU)を東北に派遣しましたが、その他の部隊は沖縄県にとどまり、アフガニスタン派兵も継続しています。
米軍・自衛隊による震災対応を通じて、司令部機能の一体化が急速に進んだことは重大です。
米軍のJSFに加え、自衛隊も東京・市ケ谷の統合幕僚監部に「2国間危機対応チーム」(BCAT)を設置。さらに、横田基地内の「日米共同運用調整所」(BJOCC)に幹部を派遣し、米軍との調整を行っています。現時点で「1等海佐以下3名」(防衛省)が詰めています。
BJOCCは2006年5月の在日米軍再編合意に基づいて設置されたもの。日米の司令部一体化を図るのが目的です。
在日米軍司令部は本紙の質問に「BJOCCでは通常、自衛官は常駐していないが、現在の2国間の調整や共同作業は、支援活動に必要な環境を作り出している」と答えました。震災対応を理由に常駐態勢が継続し、より幅広い軍事作戦まで対応する形に「深化」するのか、動向に注目する必要があります。
沖縄“軟化する”
一方、震災支援を利用し、同盟「深化」を図ろうとする発言が目立っています。
日米同盟を担当するキャンベル米国務次官補らが創設したシンクタンク「新米国安全保障センター」の3月18日付報告書は、「米軍が果たしている救援の役割は、沖縄の米軍プレゼンスに対する住民の態度を軟化させうる」と、あけすけに述べています。
米軍からも「(普天間基地に駐留する)米海兵隊航空部隊が日本本土から近いことにより、海兵隊は迅速に緊急支援物資を運ぶことができた」(同基地のスミス司令官)との発言が相次いでいます。
松本剛明外相は4月29日にワシントンで行われた日米外相会談後の記者会見で、6月下旬の菅直人首相訪米の前に行われる2プラス2について「震災での日米協力の構築も議題になる」と述べ、日米同盟「深化」と震災協力を一体的に議論する考えを示しました。
北沢俊美防衛相は7日、沖縄県を訪問して普天間基地「移設」に関する政府方針を伝えるかまえです。震災対応を“追い風”にして同基地の県内「移設」を推進する動きには、「筋違い」との批判が相次いでいます。
同盟強化が日米両政府の本音であるのなら、何のための震災支援だったのか、ということになります。
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