2011年5月5日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 暦はまた3月11日に戻ってしまいます。一夜明け、上空から水びたしの街を写す映像がとらえた、孤立する小学校。屋上で助けを求める子どもたちの姿が、目に焼きついています▼どこの学校だったのでしょう。じっとヘリコプターを見上げる子が、体全体で問うているようでした。いったい、なにが起こっているの? あの子の友だちや家族は、無事だったのでしょうか▼宮城県の石巻市では大津波が、北上川の河口から4キロ奥の大川小学校まで押し寄せました。児童の7割にあたる84人が、命を落とすか行方が知れず。東日本大震災で死亡・不明の東北3県の子どもは、小・中・高校に通っていた人だけで約540人といいます▼数日たち、別の子どもたちの姿が伝えられました。避難所で、力仕事に、被災者を励ます催しに、はりきる中学生や高校生です。地域の立派な支え手。彼らは、復興にさいしておとなに意見をいい、街づくりや村づくりに参加する、十分な権利をもっています▼分かっているだけで130人が、震災孤児になったといいます。多くは親族から、あるいは全国の人々からも救いの手が差し伸べられています。けれど、悲しいとき寂しいときは泣いたっていい。詩人もうたっています。「なくぞ/ぼくなくぞ/いまはわらってたって/…/ぼくがなけば/にほんなんかなみだでしずむ…」(谷川俊太郎「なくぞ」)▼涙のあとの目には、世界が前と少し違ってみえるかもしれません。そこからまた、新しい一歩が始まります。





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