2011年5月3日(火)「しんぶん赤旗」

主張

憲法記念日

被災地にこそ憲法を生かせ


 日本国憲法が施行されて64回目の憲法記念日を迎えました。

 戦後最大の東日本大震災と、いまだに収束のめどがたたない東京電力福島第1原発の重大事故のなかで迎えた憲法記念日です。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(前文)。憲法の精神が、被災地にこそ生かされることを切望します。

被災者の生存権保障せよ

 「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」(11条)、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については(中略)最大の尊重を必要とする」(13条)、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(25条)

 大震災で亡くなった人と行方不明者が2万5千人を超し、いまだに13万人近くが避難所などで不便な生活を余儀なくされています。憲法のことばは、きわめて重たいものがあります。一日も早く人間らしい暮らしが取り戻せるよう、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」(25条)との、責任を果たすことが求められます。

 地震や津波で助かった命が「震災関連死」などで損なわれないよう、避難所での生活を改善することは急務です。同時に住まいの確保が生活再建の土台になる立場で、仮設住宅の建設や公共住宅の入居などを急ぐ必要があります。

 被災地では住宅だけでなく、農地や漁船、漁具、店舗や工場などが広範に破壊され、仕事や働く場が失われた状態です。原発事故で避難させられ、出荷や操業を中止しているところもあります。

 「幸福追求権」を認めた13条や「生存権」を保障した25条とともに、27条の「勤労の権利」や29条の「財産権」も生かして被災地の農業、漁業、中小企業や地場産業を再建し、被災者に働く機会を保障していくことは、地域経済再生の大前提です。阪神・淡路大震災などを通じて切り開かれた住宅を失った被災者への個人補償など公的支援の抜本拡充が求められます。原発事故の被害を、国の責任で東電に賠償させることも必要です。

 被災地の復興の主役になるのは、被災した住民自身と自治体です。

 「国は国民のあつまりで、国民のひとりひとりがよくならなければ、国はよくなりません。それと同じように、日本の国は、たくさんの地方に分かれていますが、その地方が、それぞれさかえてゆかなければ、国はさかえてゆきません。そのためには、地方が、それぞれじぶんでじぶんのことを治めてゆくのが、いちばんよいのです」(施行直後、文部省が発行した『あたらしい憲法のはなし』)。このことばどおりの実現が、いよいよ求められます。

「軍復」運動を広げて

 憲法学者の森英樹氏は「しんぶん赤旗」日曜版のインタビューで、「いまや『軍事費削って復旧・復興にまわせ』の『軍復(グンプク)』運動が必要」と提唱しました。9条で戦争を放棄した憲法は世界的にも注目される存在です。

 国民主権や平和主義、基本的人権の保障、地方自治など、憲法を全面的に生かしてこそ、被災者の願いに応えられます。





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