2011年5月2日(月)「しんぶん赤旗」
毎日2回 街が海に浸る
水道復旧できず「トイレも使えない」
宮城・石巻 沿岸で地盤沈下
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宮城県石巻市の沿岸部では、震災後の地盤沈下により、満潮時に岸壁を越えて海水が押し寄せる状況がつづいています。毎日2回の冠水が、水道の復旧と住民の生活を妨げています。
「長靴がないとこの先は歩けないよ」―。取材した4月30日の満潮は、午前1時半と午後2時半。午後1時をすぎると、みるみると側溝から海水があふれ出し、道路を覆います。床上浸水する家屋もありました。
冠水するのは、同市の渡波(わたのは)、湊、南浜、門脇の4地区。70〜80センチ沈下していると、地元の漁師は語ります。
昼間の冠水は、車の通行や買い物だけでなく、水道管復旧工事の障害にもなっています。外洋から万石浦に入る内湾部に位置する同地区は、津波による流出を免れた家屋もあるものの、大半は床上浸水の被害を受けました。
女性(68)は、避難所から満潮時を避けて、自宅の片づけに通っています。「水道が戻らないとトイレも使えず、自宅に帰れない」と、避難所生活の疲れをにじませます。
また、避難所で2人の子どもと生活する29歳の女性は、一度は帰宅したものの、余震がつづく状況での冠水に不安を感じて断念したといいます。「地盤沈下した地域がどう復興されるか方針がわからないから、今後の見通しがつかない」と、国や県の対策の必要性を訴えます。
4月28日から県と市の共同事業で岸壁への土のう設置工事が進んでいます。ワカメ養殖を営む70代男性は、行政対応の遅さに不満を募らせます。「早く水が入らないようにしてほしい」と語りました。(池田晋、呉紗穂)