2011年5月2日(月)「しんぶん赤旗」

主張

米兵犯罪

国民に犠牲強いる「公務」とは


 沖縄の米空軍基地や山口県岩国基地の米軍属が交通事故で日本人を死亡させたにもかかわらず、日本の検察が不起訴処分としたことに怒りが広がっています。

 検察が米軍属を不起訴処分にしたのは、米軍から「公務証明書」が送られてきたからだというのが日本政府の説明です。交通事故で日本人を死亡させた罪は重大です。日本の手で裁くのが当然です。米兵であれ軍属であれ、米軍が「公務中」とさえいえばうのみにし、不起訴処分とするのでは、日本は主権国家といえません。

米軍の勝手な運用

 沖縄ではことし1月沖縄市で、米空軍基地の軍属が運転する自動車が対向車線に進入し、軽自動車に正面衝突して日本人青年を死亡させる事故がおきました。自動車運転過失致死罪であり法定刑が7年以下という重い罪です。

 にもかかわらず政府は、「職場から帰宅する途中」(法務省官房審議官)という説明で「公務中」と判断し、不起訴処分にしました。所要の裏づけ捜査をしたとはいいますが、被害者の母親は、10分前に基地をでたことを示すタイムカードで「公務が証明されたといえるのか」と怒っています。帰宅途中にどこかに立ち寄ったのではないか、事故のさい飲酒の検知を行っていなかったのではないかなどの疑問にもこたえていません。

 今回の事故対応でも、米軍がだした「公務証明書」を検察が検証し、反論する姿勢がみられませんでした。それは基地と自宅の往復や公の行事で飲酒した場合の運転でも「公務」と認めた1956年の日米密約に従っているからです。56年の密約は72年の法務省刑事局長の「マル秘」資料にも収録され、いまも日本政府の手をしばっています。「公務中」を理由に日本の刑事裁判権を放棄した米軍地位協定の抜本的見直し以前にも、こうした密約による理不尽な米軍特権を正すことが重要です。

 日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の追及もあって、公の行事での飲酒が「公務」だという米側の言い分について、外務省も「社会的通念に合わない」と認め、日米間協議を始めるまでになっています。帰宅途中の自動車運転を「公務」とする密約も政府は米側と協議し、早急に是正すべきです。

 米側が第1次裁判権をもちながらその処分がきわめて軽いのも大問題です。昨年9月日本人を死亡させた犯人の岩国基地の軍属は、裁判を受けることもなく懲戒処分ですまされ、わずか4カ月間運転が制限されただけです。それも通勤を除いてです。しかも日米合同委員会の合意で処分結果を日本側に知らせることになっているのに、正式に通報さえしていない事例が多いのは許せません。

地位協定の見直しを

 米軍属を不起訴処分にした政府に抗議の声が広がっています。沖縄県議会は日本政府への抗議の意見書と米軍への抗議決議をあげました。嘉手納空軍基地に隣接する沖縄市や嘉手納町の議会も抗議決議をあげています。政府は沖縄県民の声にこたえ、「公務証明書」を免罪符にする米軍のやり方を直ちに改めることが不可欠です。

 沖縄県民の総意に反して名護市辺野古への新基地建設の企てをやめるとともに、政府は県民が切実に要求している米軍地位協定の抜本的見直しをめざすべきです。





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