2011年4月30日(土)「しんぶん赤旗」
専業主婦年金切り替え漏れ
不利益生まぬ対策必要
専業主婦の年金の切り替え漏れが多数存在し、年金記録の訂正によって無年金や低年金が生じる問題で、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の特別部会は5月中に新たな対応策をまとめます。
これまでの議論では、▽年金記録の訂正によって未納となる期間を、年金を受けるのに必要な資格期間(25年間の保険料納付が必要)と認める▽保険料の追納を10年間に限って認め、追納できない分は年金額を減らす▽すでに年金を受給している人も同様に扱ったうえで、過去に受け取った年金の過払い分の返還を求め、今後の年金額も減額する―という方向でほぼ一致しています。
専業主婦は、夫がサラリーマンの場合は保険料を払う必要がありませんが、夫がサラリーマンでなくなると保険料を納める必要が生じます。厚労省によると、この切り替えをしておらず、年金記録をただした場合、年金額に影響がでるのは推計47・5万人。そのうちすでに年金を受給しているのは5・3万人です。
厚労省は昨年12月の課長通知で、現行制度で追納が可能な2年間以外は保険料を納めていたとみなす救済策を実施しました。しかし、それに対し「不公平」という声が起き、救済策を撤回。法改正による新たな対応を検討してきました。特別部会の示す方向は、課長通知に比べ救済幅を狭めるものとなっています。
この問題が起きた最大の要因は、行政が年金切り替え手続きの必要性を十分に知らせず、実態把握を行ってこなかったことにあります。厚労省自身、制度の周知徹底が不十分だった、届け出漏れがあった場合の対応が不徹底だったなど、行政側に責任があることを認めています。
とくに、すでに年金を受給している人の年金額は行政側がいったん認定した額であり、厚労省の年金記録回復委員会も、▽財産権として受給権が発生している▽減額は高齢者の生活の安定を阻害し生存権にも関わる問題を招く―と指摘しています。
正しい年金記録にすることはもちろんですが、そのことで無年金・低年金の人が出ないように、年金権を保障し老後の生活を保障していくことが必要です。同時に、きちんと手続きを行った人たちに不利益にならない対応策が求められます。
日本共産党は、全期間の保険料追納を可能とし、払いきれない人には減免制度を設けるなどの対応をとるよう求めています。
問題の根本には、日本の受給資格期間が諸外国からみて異常に長く、25年間加入しないとまったく受けられないこと、最低保障年金がないことがあります。無年金・低年金の根本的な解決には、最低保障年金の導入が必要です。
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