2011年4月29日(金)「しんぶん赤旗」
穀田国対委員長の代表質問 衆院本会議
日本共産党の穀田恵二国対委員長が28日の衆院本会議で行った第1次補正予算案に対する代表質問は次の通りです。
|
東日本大震災で犠牲となられた多くの方々に哀悼の意を表します。いまなお不自由な生活を余儀なくされている被災者の皆様に心からお見舞い申しあげます。また、困難な中で被災者救援・地域の再建のために全力をあげておられる皆様に心からの敬意を表します。
避難生活の改善
まず、一刻も待てない避難生活の改善です。
地震発生から1カ月半以上が過ぎましたが、依然として1万1千人以上の方々の安否が確認されておらず、わかっているだけで13万人を超える被災者が避難生活を強いられています。(26日現在)
巨大地震と大津波から助かった命を失うことがあってはなりません。
水道や電気が復旧していないばかりかトイレがあふれている劣悪な環境の避難所がいまだに放置されています。1カ月半以上たっても、温かい食事がない、一度も風呂に入っていない、間仕切りがまったくない、医師や保健師の巡回もない、あっても10日に1回程度など、人間らしい生活にほど遠い極めて深刻な状態が続いています。(4月22日、被災者生活支援特別対策本部)
感染症の拡大が危ぐされ、長引く避難生活のストレスの影響も懸念されています。自治体も被災し、その機能の一部を失いながら努力していますが、その自治体にただ「要請」するだけでは、対応しきれないことは明らかです。具体的な避難所を特定し、被災自治体と連携して国が責任をもって課題を解決していくことが必要ではありませんか。
被災者に人間らしい生活を保障するためには、避難所から一刻も早く仮設住宅等へ移ることができるようにすることが求められています。希望者全員が入れる仮設住宅の建設を大規模かつ早急に進めなくてはなりません。そのためには、公有地の提供はもちろん、民間用地の借り上げ、民間住宅の借り上げ、可能な場合は個人の宅地内への建設など、考えられるあらゆる手だてを尽くすことが必要です。
再建のすすめ方
第二は、被災者の生活再建と地域の再建の問題です。
重要なことは、復興の土台は被災者の生活再建と地域社会の再建ということです。そのことに政府は責任をもつべきです。同時に、生活を支える農業や漁業・水産業、中小企業の再建にも国が責任をもって取り組むことを明確にすることが必要です。
そのすすめ方は、「計画は住民合意で、実施は市町村が主体に、財源は国が責任を持つ」、この原則を貫くべきです。国が上から復興計画を押し付けるやり方はとるべきではありません。これを基本とすべきであります。
被災者にとって生活再建に国が全面的に支援をするというメッセージは、困難を乗り越える励ましとなります。手元資金として義援金や災害弔慰金、被災者生活再建支援法にもとづく基礎支援金を一刻も早く被災者に届け切ることが必要です。
また、生活再建をすすめるうえで、被災者生活再建支援制度、個人補償の抜本的拡充がどうしても必要です。菅総理は先月31日、わが党の志位委員長に対し、被災者生活再建支援法を協力してつくった経過にも触れながら、上限300万円の支給額について「私も引き上げが必要だと思う」と述べました。ところが第1次補正予算には計上していません。なぜでしょうか。
被災者の実態に即して、再建を可能とする支援金制度とするために正面から取り組むべきではありませんか。
また、生活を支えるなりわいであり地域を支える農業、漁業や水産業、中小企業への支援が決定的です。これらを再建してこそ、地域経済の再建、雇用の基礎をつくり出すことができます。
津波で住宅や車をはじめ、農地、船や漁具、店舗や事業所、機械も失われました。残されたのは借金だけと悲鳴があがっています。「マイナスではなく、せめてゼロからのスタートを」、被災したみなさんの一致した訴えです。借金返済の心配と負担をなくし、再建へ集中してもらう、この条件をつくるのは国の責任ではありませんか。
被災者が住宅を再建するために、津波で流された住宅のローンをかかえたまま、新たな借金をしなければならないという二重ローンを強いることは絶対にやめなければなりません。
さらに地域を支える被災者の生業を再建するための直接支援も必要です。被災農地をいったん国が買い上げて再生させる、被災漁業者が負担なしで漁船の建造・再建ができるようにする、中小企業に休業補償をおこなう、被災業者の返済不能となった債権を地域金融機関から買い取る仕組みをつくり債務の凍結・免除をおこなうことなどを検討すべきです。総理の答弁を求めます。
地域の再建をすすめるためには、地域社会の核となるべき機能の再建が不可欠です。
被災地では公立病院や保健所の役割が改めて問われています。これまでの構造改革路線を改め、医療関係者と行政が一体となった地域の保健医療体制の確立こそおこなうべきです。公共交通の機能回復も急がなければなりません。
広域化や合併ではなく、職員の増員など消防力の強化や被災者に身近な役場機能の強化も優先課題として取り組まなければなりません。
また復興の財源について、消費税の増税を検討することはやめるべきです。消費税は被災者にとりわけ重い負担となり、生活再建を妨げ、被災地の産業復興の大きな障害となることは明らかです。復興の財源は、まず今年度予算を抜本的に組み替えて、法人税減税や証券優遇税制の延長をやめること、原発の建設推進予算、不要不急の公共事業、米軍「思いやり」予算などを中止してつくりだすべきであり、さらに必要な財源は、244兆円に上る大企業の内部留保を活用するべきだと考えます。
原発事故の対策
第三は、東京電力福島原発事故の問題です。
菅総理、あなたは今回の原発事故は「あってはならない事故」だと言いましたが、それは「安全神話」にたって必要な対策をとってこなかったために起きたものです。事故が起こってからは、法律で定められたことさえやらずに被害を拡大してきたのです。その責任は重大です。総理、あなたは、一昨日、今回のような深刻な事故は「起こりえない」「多重防護だから安全」などとしてきたこれまでの政府答弁が誤りであったと認めました。
こうした見地に立つのであれば、あなたのやるべきことははっきりしています。
一つは、事故の拡大を防ぎ、一刻も早く事態を収束させることです。
原発事故の収束なくして復旧・復興はありえません。東京電力が作成した「工程表」の根拠となっているデータのすべてを提出させ、それを公開すること。内外の英知を集め客観的な評価をおこない、事態の収束の見通しについて明らかにすることです。
二つは、原発に起因するすべての被害について速やかに補償することです。
政府に促され東京電力が開始した「仮払い」は、30キロ圏内に限定され、漁業や農業被害などは対象外とされています。原発から20キロ圏内、30キロ圏内、30キロ圏外を含む南相馬市では、「仮払い」によって住民が分断されることまで起きています。総理、あなたはこれでよいと考えているのでしょうか。事故により深刻な事態を引き起こしたばかりでなく、その補償をめぐっても住民を混乱させる、こんなやり方は直ちに改め、原発に起因するすべての被害を補償する、このことを明確にさせるべきではありませんか。
三つは、今回のような深刻な事故が起こりうるとの前提で原発行政を見直すことです。
現在設置されている原発すべては、「安全神話」にもとづいて国がお墨付きを与えてきました。新増設の計画は直ちにやめることです。全国54カ所すべての原発の総点検を急ぎ、安全が確保されない原発は直ちに停止するなど、老朽化した原発の延命措置を中止するなど、「あってはならない事故」の危険をなくす努力を真摯(しんし)におこなうことです。さらに原発依存から脱却し、自然エネルギーへの計画的な転換を決断すべきです。総理の責任は重大であり、明確な答弁を求めます。
最後に、元の生活を取り戻したいとの切実なおもいを実現するため、被災者のみなさんとご一緒に力をあわせていくことを表明して質問を終わります。