2011年4月29日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「一体改革」議論再開

給付抑制+庶民増税=破綻


 東日本大震災で中断していた社会保障と税の「一体改革」に関する「集中検討会議」(議長・菅直人首相)が27日から再開しました。予定通り6月に「一体改革」案を取りまとめる方針です。

 財界は社会保障削減と消費税増税をセットにした「一体改革」の実行を繰り返し求めています。長谷川閑史(やすちか)・経済同友会代表幹事は「先送りし続けてきた問題をさらに先送りしてはいけない」とくぎを刺しました。

自公の削減路線と同じ

 27日の会議では自公政権で厚労相を務めた柳沢伯夫氏ら5人が提言を提出しました。大震災で財政負担が増大するとして「給付の重点化・選択と集中」「効率化」を強調し、社会保障の抑制を強く打ち出しています。これが「成案をまとめるための基調」(与謝野馨一体改革担当相)だといいます。

 事前に実施した各省への聞き取り調査でも医療・介護の自己負担増や給付対象の縮小、年金支給開始年齢の引き上げなど社会保障の削減策がずらりと並びました。

 厚労省は暮らしの“最後のとりで”である生活保護を削減する改悪案を「一体改革」に盛り込む方針です。これは「生活保護との整合性に配慮する」とした最低賃金などに連動し、生活を守る制度全体の水準低下につながります。

 まさに自公政権の社会保障削減と同じ路線です。

 特に復興の財政負担を口実にしていることは許せません。高齢化が進んでいる被災者の生活再建のためにも社会保障を削減から拡充に転換することが不可欠です。

 復興債の償還財源として相当な金額が必要になるとしても、償還期間は10年単位の話です。住民を主人公にした復興で地域経済を立て直すとともに、内需を温めて経済成長を図っていくことができれば税収も増加し、大きな財源を生み出せます。削減路線の復活は、それを妨げる障害になります。

 それに加えて、民主党政権が狙っている消費税増税を強行するなら、暮らしと経済は破綻します。

 政府は震災復興税としても消費税増税を検討していますが、異論が噴出しています。政府の復興構想会議でも「(消費税増税は)税負担を被災者にもかぶせることになる」(臨済宗福聚寺(ふくじゅうじ)住職で作家の玄侑(げんゆう)宗久(そうきゅう)委員)など次々と反対の声が上がりました。岩手県知事の達増(たっそ)拓也委員は経済全体への影響に懸念を表明し、復興税に反対しました。

 財務省出身の大学教授さえ論文で「所得の低い人に大きな負担となる逆進性への懸念」を挙げ、消費税を復興財源から外すよう求めています。

応能負担を原点にして

 消費税は所得が低く、社会保障の支えを必要とする人ほど重い負担を強いられる生活破壊税です。救うべき対象の人に重い負担になり、日本経済に大きな打撃を与え、結果として税収を落ち込ませて財政にもマイナスとなる―。消費税が復興財源にふさわしくない理由は、社会保障の財源を考えるときにもぴたりと当てはまります。

 集中検討会議でも「税は消費税だけではない。あるところから出してもらうのが税の基本だ」という意見が出ています。経済と財政がともに厳しいときだからこそ、財源問題の打開には、負担能力に応じて負担するという応能負担の原点に立ち返ることが大切です。





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