2011年4月28日(木)「しんぶん赤旗」

せめて気兼ねせず眠りたい

避難所 長期化 「早く仮設住宅に」

岩手・宮城・福島 本紙が32カ所調査


 東日本大震災の発生から、1カ月半がたちました。車や船、家屋の解体・撤去が始まる一方で、いまだに13万人を超える人が、約2500カ所の避難所に身を寄せています。いま避難所はどのような状況で、被災者はどんな思いで過ごしているのか―。本紙は22日から24日にかけて、岩手県、宮城県、福島県の沿岸部の避難所を中心に32カ所を訪ね、避難者や避難所の責任者に話を聞きました。 (東日本大震災取材団)


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(写真)1人あたり畳1畳の避難所暮らしが続く。高齢者は体を横にして時間をつぶす=25日、宮城県山元町の山元小学校

 「戻りたいと思っても、何もないから戻れない」「避難所以外行くところがない」「親類の家に長くはいられず戻ってきた」―。被災者は、さまざまな理由を抱えながら、避難所で懸命に暮らしています。

 どこの避難所でも「ありがたい。ぜいたくは言っていられない」と語る姿がありました。しかし、「みんな我慢強い。要求があっても言えないのではないか」と、心配する避難所の責任者もいます。

 帰る家がなく、長期化する避難所生活。多数聞かれたのが、仮設住宅への入居を希望する声です。

 岩手県釜石市にある旧釜石第一中学校の避難所は、廃校になった体育館を使用しています。水道管が古く水道が使えず、洗濯も困難です。64歳の漁師は「早く仮設住宅に入りたい。防寒のために着込んで寝ているが、気兼ねせず服を脱いで寝たい。自由がほしい」ともらします。

 「風呂は4日に1回程度」という同県陸前高田市の米崎小学校。水道が回復しておらず、トイレは沢から引いた水を、バケツでくんで流しています。夫と2人で避難している76歳の女性は「お金もない、家もないでは生活できない。一日を何もせずに過ごすことが多く、ただ生きるばかりの生活は、やりきれない」。

 宮城県亘理(わたり)町の亘理高校に避難する男性(75)は「人に迷惑がかかるので、夜トイレに行けず、もらしてしまったこともある」と話します。

 家を借りるなど避難所を去る人がいる中で、岩手県山田町の大沢小学校では「動ける人が出ていき、動けない高齢者だけが残ったらどうなるのか」との声も上がっていました。

 仮設住宅の入居期間は2年間。「仮設に入っても生活費がない」「2年後はどうなっているのか。とても考えられない」と、先の見えない不安を抱えています。

不安 先見えない

本紙避難所調査から


 岩手、宮城、福島の3県で行った避難所への聞き取りでは、さまざまな事情や悩み、要望を抱えていることが浮き彫りになりました。


仕事 再就職のあてない 生活きつい

 「魚の加工工場で働いていたが津波でやられて『いつ立て直せるかわからないから』と解雇された。退職金なし。組合からわずかな見舞金だけ。再就職のあてはない」(岩手県宮古市、48歳女性)

 「これまで職を転々としてきた。求人票をみるが専門職しかない。就職の見通しがない。被災者に直接、現金が渡るようにしてほしい」(岩手県山田町、58歳)

 「お店のレジ打ちのアルバイトをやっていたが解雇された。津波が来る前もぎりぎりの生活だった。仮設に入ったあとも生活がきつい」(岩手県大槌町、56歳女性)

 「看護師でデイサービスの仕事をしていた。復職できるかは協議中。一人暮らしの身で65歳までどう生活すればよいのか」(宮城県山元町、62歳女性)

 「アルバイトをしていたコンビニが流されて跡形もなくなった。失業したけど、いまは仮設住宅の建設のアルバイトに行っている」(宮城県南三陸町、23歳男性)

 「特養ホームで調理の仕事をしていた。夫も町内で仕事をしていたが2人とも仕事ができなくなった。何もすることがなく1日が長い。収入がなく、この先、就職できるのかも不安」(警戒区域の福島県富岡町、40歳女性)

住宅 大人数詰め込み 戻る家ほしい

 「長年住んでいたところにまた住みたいと思うが、自宅や店は津波で流された。息子が地方にいるので来ないかといったが、墓もあるし…」(岩手県宮古市、63歳女性)

 「どのくらいの仮設住宅ができて、どんな人がどれくらいの人数で入れるのか具体的に教えてほしい。そうすれば我慢もできる」(岩手県大船渡市、62歳女性)

 「避難所のスペースは狭い。結局はこれだけの大人数を詰め込む態勢は早く解消しなければならないと思う。手に入れることができる人は物置などを仮住まいにしている人もいる」(宮城県気仙沼市、自治会長)

 「家が満潮時に冠水して帰れない。地盤沈下した地域が今後どう復興されるのか分からず、家を取り壊す判断もつかない。仕方なく避難所で暮らし続けている」(宮城県石巻市、29歳女性)

 「避難所がぎゅうぎゅうなのを気にして、1階が津波で被害を受けた自宅の2階で寝泊まりしている人がいる。早く仮設をつくってほしい」(宮城県東松島市、避難所管理者)

 「家からは何も持ち出せなかった。夫はもう海の近くには住みたくないと言っている。公団でも仮設でも戻る家がほしい」(仙台市宮城野区、62歳女性)

行政へ要望 商店支援して 漁業に補償ぜひ

 「夫は地元の消防団員で、津波で亡くなった。昨年のチリ地震の津波で養殖棚が破壊され、多額の借金を背負っている。今回で家も漁具も船も失った。債務を補償してほしい」(岩手県釜石市、47歳女性)

 「国や県には、地元の人が経営する商店や工場を支援してほしい。地元の人の仕事を確保することが地元の支援になる。それができなければ生活などできない」(岩手県陸前高田市、73歳女性)

 「当面の生活を支える、生きるための最低限のお金がほしい。母は震災後、エコノミークラス症候群を患った。病院や役所に行くのに車がなく、タクシーを使うしかない。政府は早く義援金を分配してほしい」(岩手県大船渡市、59歳女性)

 「私たちは金のない状態。いずれは自立できるような民間アパートとかを借り上げできるようにしてほしい。そこに住める場合は敷金礼金など50万円くらいは行政から補助してほしい」(仙台市若林区の避難所責任者)

 「(原発から逃れるために避難し)自力で部屋を借りている人がいるが、その人たちは補償の対象になっていない。少しでも補助がほしい。県が立て替え、国、東電が補償してほしい」(福島県郡山市、避難所責任者)

 「国や県は、被災地域に家を建てるなと言うだけではなく代替施策、方針を示してほしい」(岩手県宮古市の避難所責任者)

 「漁業復旧への融資をしてもみんな高齢のため払えないのでは。復旧ができる補償を。漁業者は個人経営だし、返済能力がない」(岩手県山田町、避難所責任者)





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