2011年4月27日(水)「しんぶん赤旗」
衆院予算委 原発事故問題 吉井議員の質問
備えなし 事故後も対策なし
政府と東電による「人災」
|
「あってはならない事故が起こったのは、必要な対策もとらなかったからだ。事故後も直ちに対策をとらなかった人災だ」―。26日の衆院予算委員会で、福島第1原発での事故を取り上げた日本共産党の吉井英勝議員。「安全神話」に立って事故を引き起こした政府と東京電力の責任が浮き彫りになりました。
首相、誤り認める
吉井氏は、2005年から原発の全電源喪失による冷却機能喪失と炉心溶融の危険を再三にわたって国会で指摘していたにもかかわらず、政府は「多重防護でしっかり事故を防いでいく」(10年、直嶋正行経産相)などとしてまったく対策をとってこなかったことを指摘しました。
吉井 これまでの政府答弁や対応は間違っていたと考えるか。
首相 事実として、間違っていたといわざるをえない。
吉井氏が送電鉄塔の倒壊による外部電源喪失の対策をとっていなかったことを指摘すると、原子力安全委員会の班目春樹委員長も「耐震上の注意はしていなかった」と認めました。吉井氏は「『安全神話』にたって事故に備えてこなかったことが事故を引き起こした」と強調しました。
東電まかせの対応
事故後の対応はどうだったのか―。吉井氏の質問に、菅首相は地震発生の3月11日夜には班目委員長に炉心溶融の危機を伝えられ「十分理解していた」と答えました。
吉井 (首相は)原子炉規制法に基づいて東京電力にベント(蒸気排出)と海水注入を命じることができた。なぜ、直ちに危機回避の措置をとらなかったのか。
首相 ベントをすべきだと午前1時30分に経産大臣から指示をだした。
しかし、吉井氏は実際に法律に基づく命令は、ベントについては地震発生から16時間後、海水注入は29時間19分後になったことを指摘。「結局、電源喪失して炉心溶融に至る危険を知らされながら、東電まかせの対応だった」と批判しました。
さらに吉井氏は、東電に放射能の放出状況など全データの提出もさせていないため、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)やERSS(緊急時対策支援システム)が1カ月半にわたって機能していなかったことをあげ、「政府が『全力で収束させる』といっても東電いいなり、国家の機能を果たしていない」と指摘しました。
全被害者に補償を
原発事故による被害は、住民の生活や仕事、子どもの教育をはじめ広範囲に及んでいます。
吉井氏が全面的補償を求めたのに対し、東電の清水正孝社長は「公正で迅速に対応するが、国の支援も必要」などと答弁。吉井氏は「加害責任を忘れて、税金で面倒を見てくれというのはとんでもない」と批判し、首相にただしました。
吉井 東電が農林漁業、中小企業をはじめ総ての被害者に補償させることを約束せよ。
首相 国策として推進してきた。一義的責任は東電にあるが、適切な補償がするよう責任をもって対応する。
吉井氏は「国策だといって事故を起こした。東電に被害者の全面的な補償をさせるのは当たり前だ」と強調しました。
◆福島原発事故の初動対応◆
【3月11日】
14時46分
地震発生
夜
原子力安全委員会の班目委員長
「原子炉の圧力を下げ、圧力容器からベントしなければならない。それをしなければもっと大変なことになる」
海江田大臣、総理に報告
【3月12日】
6時50分
政府がベントを命令(地震発生から16時間後)
10時17分
東京電力がベントを開始
15時36分
1号機で水素爆発
20時05分
海水注入命令(地震発生から29時間19分後)