2011年4月27日(水)「しんぶん赤旗」
息子に譲った酪農 台無し
車で牛にえさやり、数頭死んだ 葉物出荷できない
福島の農家 胸の内ぶつけ
東電本社前 抗議行動
26日、東京都内でおこなわれた「東電は全面的に償え! 抗議・賠償請求行動」には、福島原発事故による放射能汚染に苦しむ胸の内をぶつけようと、被災地・福島県の農家が多数参加しました。
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千代田区内幸町にある東電本社前。「牛と土地」「放射能」「除去して」「返せ」と手書きのプラカードを連ねて抗議行動に参加したのは、双葉郡牛飼い連合のメンバー。そのひとり、男性(66)は、息子(36)夫婦とともに浪江町で酪農を営んでいます。
親子とも避難
原発事故で、子どもがいる息子たちは放射能を恐れて秋田県の親類の家に避難し、正勝夫婦は、福島市の避難所に避難しました。「息子夫婦に譲った酪農が軌道にのったばかりなのに、東電のせいで台無しだ。福島市から車で牛にえさやりに通っているが、数頭死んだんだ。かわいそうだ。東電は弁償して」と語りました。
「東電 俺けの田んぼ汚したな 許せねー」との手書きのむしろ旗を立てて東電本社前の抗議行動に参加したのは、郡山市の米農家の男性(60)です。
原発近くの双葉町で有機農法をやっている20年来の仲間を自宅に避難させています。その仲間は、孫と妻が家ごと津波に流されて行方不明のまま。「東電がどのぐらいの会社か知らなかったけど、これほどでかい(会社)なら補償できる。安心した」と皮肉りました。
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収入なくなり
須賀川市の農家は、おいしそうなキャベツを持って、「東電は放射能止めろ」「東電は全面的に賠償しろ」と大きな声でシュプレヒコールをあげました。キャベツは放射能汚染の風評被害で出荷停止になったものです。
須賀川市は、原発から60キロ圏内です。男性(67)は、「組合をつくって直売所に売っていたホウレンソウはじめ葉物がまったく出荷できない。1カ月半収入がない。東電は賠償を。国は、仮払いも含めて責任をとってほしい」と語りました。
仮払い なぜ時間かかる
農水省に要請行動
「政府は東電と賠償責任のなすりあいをせずに早く仮払いをせよ」。農民連(農民運動全国連合会)と全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は26日、参院議員会館で農水省への要請行動をおこない、東京電力福島第1原発の放射能漏れ事故の損害賠償の早期支払いをめぐり国の責任を追及しました。
要請には、避難指示がでている福島県だけでなく、出荷制限や風評被害で苦しむ全国の農家など約400人が参加しました。
なすりあいに
東京電力側が“政府の原子力賠償紛争審査会の決定をまって賠償をおこなう”との態度をとっており、農水省の担当者も同審査会がおこなう28日の方針待ちの回答をしたことから批判が噴出。福島県の農家からは「われわれは一日一日が生きるか死ぬかだ」「仮払いになぜそんなに時間がかかるのか。菅内閣が命令すればいいことだ」「政府が仮払いをして、東電にあとで請求もできるではないか」との声が続きました。
また、地震や放射能被害により米の作付けができなくなることが広がってるとして、生産目標数量の見直し、放射能汚染農地の防除、汚染の検査体制の充実を求めました。
原因は明らか
農民連の笹渡義夫事務局長は、従来の枠組みでなく非常時に対応した政治の役割を果たすように要求。「原発被害は犯人と原因が明確なのに、1カ月半たっても農業の賠償金の具体化が何も出てこない。仮払いがないと生きていけないという声に、政府はすぐにこたえよ」と訴えました。