2011年4月27日(水)「しんぶん赤旗」
大津波くれば原発炉心損傷
経産省関連機関が指摘 昨年
吉井議員の警告裏付け
経済産業省所管の原子力安全基盤機構が、津波による原発事故の危険性について、東京電力福島第1原発に酷似した条件で分析し、昨年12月の成果報告書にまとめていたことが26日までに分かりました。確率的には、波高7メートルの津波によって炉心損傷に至るケースの頻度が最も大きく、7メートル以上の津波では頻度は小さくなるものの、ほぼ確実に炉心損傷に至るという結果がでました。こうした分析がありながら津波対策を軽視してきた政府や東京電力の責任が、いっそう浮き彫りになっています。 (中村秀生)
報告書のタイトルは「地震に係る確率論的安全評価手法の改良」。地震や津波時の炉心損傷の頻度などを分析・評価しています。
津波の分析では、地震による機器の損傷はなく、原子炉の停止にも成功したと仮定。海水ポンプが損傷して海水取水不能による冷却機能喪失▽停電や非常用ディーゼル発電機の故障などですべての交流電源を喪失した後、交流電源を必要としない原子炉隔離時冷却系(緊急炉心冷却装置の一種)で冷却を試みるが失敗▽原子炉建屋内に海水が浸入して機器損傷―といった炉心損傷に至る複数のシナリオを想定。一方、外部電源や非常用ディーゼル発電機が回復して、炉心損傷に至らないケースも想定しました。
海水周りの条件として、原子炉建屋の開口部や、軽油タンクや燃料移送ポンプなどの屋外機器が設置された敷地は、基準海水面から高さ13メートル、海水ポンプが設置された位置は高さ5メートルとしました。
波高3〜23メートルの津波の高さごとに、津波発生頻度と炉心損傷に至る確率を合わせた確率を分析した結果、炉心損傷に至るケースの頻度が最も大きいのは、波高7メートルの津波が発生する場合でした。防波堤(高さ13メートルと仮定)の効果を考慮した分析では、波高15メートルの場合でした。
このとき、防波堤の効果がなければ波高7メートル以上の津波で、防波堤の効果があっても波高15メートル以上の津波で、「条件付き炉心損傷確率がほぼ1・0となり、炉心損傷頻度は津波発生頻度とほぼ同一になる」と結論づけ、津波による影響を評価しました。この条件のもとで津波が到来すれば、ほぼ確実に炉心損傷に至ることになります。報告書は、これらの波高を超えた場合に海水ポンプが機能喪失すると仮定していることが、結果に影響していると説明しています。
福島第1原発1〜4号機の敷地の高さは10メートル。5、6号機は13メートルです。東電は、海水ポンプ(敷地高さ4メートル)と防波堤は、5・7メートルまで対策済みだったと説明しています。
今回の報告書の分析では、波高が海水ポンプの設置点より2メートルを超えた場合にポンプが機能喪失すると仮定。福島第1原発1〜4号機に当てはめれば、少なくとも津波が波高7・7メートルを超えると、ほぼ確実に炉心損傷に至ることになります。
東電の発表では、3月11日に福島第1原発を襲った津波の高さは14〜15メートル。海水ポンプのある海側も、原子炉建屋や主要機器のある敷地も、ほぼ全域が浸水。海水ポンプや非常用ディーゼル発電が機能喪失したほか、長時間の電源喪失の事態が発生して、冷却機能が失われ炉心破損に至りました。
日本共産党の吉井英勝衆院議員は、早くから国会で津波による原発事故を警告。海水ポンプの水没や電源喪失などで原子炉が冷却できなくなり、炉心溶融につながる事故を懸念し、対策を求めてきました。報告書は、吉井議員の警告を裏づけたものであり、必要な対策を取ってこなかった政府や東京電力の姿勢が改めて問われます。
原子力安全基盤機構(JNES) 経済産業省所管の独立行政法人。原子力安全・保安院と連携し、原子力の安全確保に関する専門的・基盤的な業務を実施する機関として2003年に設立されました。原子力施設の検査や原子力災害の予防・復旧に関わる業務、原子炉施設の安全性の解析・評価、安全確保の調査・研究などを行います。
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