2011年4月26日(火)「しんぶん赤旗」
メコン・巨大ダム 宙に浮く
ラオス計画 流域各国から懸念
【ハノイ=面川誠】ラオスがメコン川で計画している巨大ダム建設が、流域各国の反対で宙に浮いています。水不足と農水産業への悪影響を懸念する下流のベトナム、カンボジアだけでなく、ダムの水力発電に期待していたタイでも、議会が環境破壊を理由に反対を表明しました。
タイ、ベトナム、カンボジア、ラオスは19日、4カ国の政府間機関「メコン川委員会(MRC)」会合をビエンチャンで開き、ダム建設の是非に結論を出す予定でしたが、合意に至らず決裂。近く環境相に格上げした会合を開くことになりました。
ラオスは水力発電による電力販売を輸出産業の柱に位置付けています。同国北西部に建設予定のサヤブリダムは出力128万5千キロワットで、大部分をタイに輸出する計画。建設業者もタイの大手カーンチャン社です。
メコン川下流域は昨年、渇水に見舞われました。メコンデルタに穀倉地帯を抱えるカンボジアとベトナムは、ダム建設に伴う水量減少が農業に与える打撃を懸念。逆に、豪雨でダム上流の水位が上昇した場合に放水が行われれば、メコンデルタは洪水の恐れがあります。環境変化が豊富な魚類に与える影響も指摘されています。
ベトナム政府はMRC会合で、建設を10年延期し、起こり得る影響について十分調査するよう主張しました。互いに「特別な友好関係」と位置付けるベトナムとラオスが、意見対立を表面化させるのは異例だといいます。
ベトナムのグエン・タン・ズン首相とカンボジアのフン・セン首相は24日、プノンペンで会談し、ダム建設による「否定的な影響を考慮すべきだ」との立場で一致しました。
タイ、カンボジアなどの非政府組織(NGO)263団体はこのほど、ラオスとタイ両政府に建設中止を求める請願書を提出しました。
タイ下院の政治改革委員会は21日、メコン川流域住民に大きな被害を与えるとして、全会一致で建設反対を決議。タイ発電公社がラオス側と結んだ電力輸入合意は、議会が承認しておらず憲法違反だと非難しました。
タイの環境保護団体TERRAによると、ラオスはメコン川流域8カ所でダム建設を計画。環境NGOは、サヤブリダム建設を容認すれば、相次ぐダム建設で計り知れない環境破壊が進むと警告しています。
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