2011年4月25日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPRESS
若者バンド「バードレイクス」
ロックで「社会変えよう」 被災地支えたい
僕ら世代の力を信じる
就職難、低賃金、未婚率の上昇―。若者の悩みや不満を代弁し、若者の願いに応えない社会を変えようと、音楽で呼びかけているロックバンド「バードレイクス」。千葉と東京を中心に活動し、共感を広げています。メンバーは東日本大震災の被災地でのボランティアにも参加しました。(細川豊史)
● 胸の痛み
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「自分の目で見ないとわからないことがある。テレビで見て感じるのとはまったく違う、言葉では言い表せない、胸が締め付けられる痛みを感じました」
こう語るのは、バンドのボーカル、ギターを務める清野義矢さん(24)。ベースの並木郁磨さん(25)と2人で、3月18、19の両日、津波の被害を受けた千葉県旭市飯岡地区でのボランティアに参加しました。
床上浸水した高齢夫婦の住宅で、海水混じりの粘り気のある泥をかき出し、使えなくなった家財道具を片付けました。信用金庫の床下の土砂と海水をかき出す作業は、丸一日かかりました。
「みなさんの生活が破壊されてしまって、地元の方が『まるで空襲みたいだ』と言っていたのが今でも忘れられません」(並木さん)
現地では、どの住民からも「ご苦労様」との声が。前出の高齢夫婦の親類の男性は絶えず冗談をいって和ませてくれましたが、2人が活動を終えて「帰ります」とあいさつすると、せきを切ったように号泣しました。
清野さんは「現地で感じた気持ち、支援したいという気持ちを持続させて、復興に生かしていきたい。僕ら若い者が頑張らないと」と語ります。
● 不安歌う
♪「仕事がないのはどうしようもないよ/働かないための言い訳じゃないよ」(『Oh,Yeah!』)
♪「毎日のように人身事故が起きて/社会はそれを死んだ人のせいにする/飛び込む理由は社会にあるような/どうにかならない? この状況」(『依存という名の電車』)
清野さんが作詞・作曲する曲には、多くの人が生きづらさを感じる社会への疑問と抗議が詰まっています。
2月のライブで披露したスローな新曲、『これが僕の生きる道』。
♪「職業はなんですか?/答えが出てこない/今のままじゃこの先も変わらないだろう」
清野さん自身、今春大学卒業後フリーターとなった不安を歌います。
♪「明日のことすらわからない時代だけれど/今日より明日はいい日だろう」
清野さんは、この歌詞に「僕らの世代の力を信じている」という思いを込めています。
「ムバラク政権を倒したエジプトの政変も、インターネットの役割以上に民衆が意識を持っていたことが大切だと思います。日本の若者も心にたまっているものは共通するはず。僕らはそれを音楽で呼び起こしたい」
● 言いたい
バードレイクスは清野さんが大学1年の2007年に結成。当初からのメンバー松田泰英さん(24)=ドラム=に加えて最近、並木さんと高校3年の池田皓英さん(18)=ギター=が加わりました。今春から池田さんは大学に進学。清野さんら3人はフリーターで、ルームシェアします。
映像関連の就職がかなわなかった並木さんのことを清野さんが頭に浮かべてつくった曲が『Oh,Yeah!』でした。並木さんは「バードレイクスで演奏していると、社会に対していいたいことを気兼ねなくいえる気持ちになる」と話します。
うどん屋でアルバイトする松田さんは「社会のことを話す清野くんの熱意に打たれた。一緒にメッセージを発したい」と言います。
バードレイクスは昨年10月の「反貧困大集会」に続き、11月の「第40回赤旗まつり」若者ひろばにも出演しました。「観客の雰囲気がとてもウェルカムで、それを境に僕らのライブは変わりました。言いたいこと言っていいんだと、つっかえ棒がとれた感じ」と、清野さんは話します。
バンドのメジャーデビューを目指しながら、集会や社会的なイベントへの出演を増やしたいと考えています。
● みんなで
2月の初のワンマンライブは、チケットが完売になりました。
ライブを聴いた東京都足立区の女性(21)は「ほかのバンドと違ってバイトや仕事とか身近なことを歌う歌詞が心に残るし、社会に対するメッセージを感じます。応援しています」と話します。
ライブ後、清野さんにファンの女性(24)からメールが。「清野さんたちのいう通りだと思います。今は結婚するにもステータス(地位)が必要だったり。どうすればいいのかな…?」。清野さんはメッセージを受け止めてくれたと喜びます。
新曲『君の人生を』には、こんな歌詞が。
♪「僕が変われるとき/世界も変わるはず」
清野さんは「自分があきらめたら未来はない。自分の視点が変わることで、世の中を変えられると思うんです」と語ります。
「この社会を具体的にどう変えるべきか、まだはっきりとはわかりません。でも今必要なのは、社会のことをみんなで考えることだと思います。僕らが呼びかけることで、そのきっかけになりたい」