2011年4月25日(月)「しんぶん赤旗」

地デジ移行 全国でも延期を

震災で普及活動に遅れ・テレビ難民 数百万人にも


 7月24日に予定されている地上デジタル放送への完全移行まで、残り3カ月。総務省は20日、東日本大震災の被害が大きい岩手、宮城、福島の3県で移行延期を決めました。一方、有識者や市民から「全国でも延期を」の声が上がっています。


東北の3県延長

 3県での地デジ移行延期を発表した平岡秀夫総務副大臣は、同時に「3県以外では予定通りの移行に全力を尽くす」と述べました。

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(写真)情報を得るのに欠かせないテレビ。福島県双葉町民が避難した、さいたまスーパーアリーナにも設置されました=3月19日、さいたま市中央区

 これに対し、メディア研究者の松田浩さんは「このままアナログ放送を停波すると、テレビを見られなくなる人が数百万人残される恐れがあります。機械的に『7月24日』に移行すべきではない」と警告します。松田さんは、「アナログ放送の一斉打ち切りの見直し」を求める署名を呼びかけた知識人・ジャーナリストの一人です。

関東に及ぶ

 震災の被害を受けたのは東北3県だけではありません。震災で修理が必要なアンテナなどの施設は、茨城県で3200世帯など関東地域では4900世帯になります。東北3県(1万4400世帯)の3分の1に相当します。

 もともと、関東地域はビル陰難視聴対策や集合住宅・戸建て住宅での地デジ対応が遅れていました。地デジ電波が届かない「新たな難視」世帯も多く、地デジ未対応世帯は総務省調査でも約90万世帯にのぼります。

 震災後、地デジ未対応対策として政府や業界が力を入れてきた周知・広報活動は、東日本を中心に一時ストップ。テレビから地デジへの準備を呼び掛けるCMやスーパー(字幕)が消えました。

 デジタル放送推進協会の北原俊史理事は「テレビでのPR活動が中止になった影響は大きく、デジサポ(総務省テレビ受信者支援センター)への相談の電話も半分以下になった」と言います。「電波測定などの依頼電話があっても、東日本ではガソリン不足で駆け付けることもできず、震災で地デジの普及が遅れてしまいました」

 とくに、低所得層や高齢層が、まだ地デジに切り替えられていない実情があります。

“情報源”に

 総務省は支援策として、生活保護世帯など「NHK受信料全額免除世帯」に、地デジチューナーとアンテナを無料で支給。1月からは対象を市町村民税非課税世帯にも広げました(チューナー送付のみ)。ところが、NHK受信料全額免除世帯は約280万世帯が対象ですが、現時点での申し込みは110万件。市町村民税非課税世帯については約930万世帯が対象なのに、申し込みはわずか3万件にすぎません。

 総務省地上放送課では「地デジテレビが安価になり、すでに対応済みの対象者も多い」と説明しますが、周知・広報の不足や複雑な手続きの弊害も指摘されています。「チューナーをもらっても、アパートのアンテナが地デジに対応していない」(横浜市の女性)例もあります。

 松田さんは「日本のように、地域差も考えず全国一斉に地デジ移行する国は他に例がありません。まだ大きな地震が続く中、情報としてのライフラインであるテレビを一方的に切っていいのでしょうか」と問いかけ、アナログ停波を段階的に行うよう求めています。

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