2011年4月25日(月)「しんぶん赤旗」
主張
リビア情勢
“泥沼化”する外国軍の介入
内戦状態にあるリビアに軍事介入した米英仏などと北大西洋条約機構(NATO)が、反政府勢力てこ入れのため空爆の強化や軍事顧問団を派遣するなど、作戦を強めています。政治的、軍事的手詰まりを打開するために、軍事作戦の強化を余儀なくされていること自体、外国軍の介入では問題解決できないことを示すものです。
軍事介入で「体制転換」
軍事介入の開始から1カ月余。NATO軍は、カダフィ政権の軍用機や戦車、軍事施設に対して連日のように空爆を行っているものの、政権側の攻撃の手を縛ることができないでいます。反政府勢力の拠点では政権側の包囲攻撃によって市民に大きな犠牲が出ており、国連機関が人道支援に乗り出しているものの、軍事衝突が障害になっています。空爆だけでは事態を変えることはできないとの見方が強まるなか、地上軍の派遣も取りざたされるなど、介入は新たな段階に入ろうとしています。
3月17日に採択された国連安保理決議1973は、民間人保護のため「必要なあらゆる措置」をとるよう国連加盟国に求めるとしました。すでに軍事介入の姿勢を強めていた米英仏に、事実上丸投げした格好です。採決当時、非常任理事国から表明された「緊張を激化させ、害の方が大きいのでは」との懸念は、いま現実のものとなっています。そうである以上、安保理は事態の収拾に向けて責任を果たすべきです。
米英仏3国の首脳は15日付欧米各紙への共同寄稿で、「カダフィは永遠に去らなければならない」と宣告し、カダフィ政権打倒の意思を明確にしました。リビアの将来を決めるのはリビア国民だと言いながら、体制転換がその前提だと強調しています。
3首脳は、安保理決議1973にもとづく任務は民間人の保護であり、実施している軍事作戦はカダフィ政権を打倒するものではなく、安保理決議の範囲内だと主張しています。しかし、カダフィ氏が自ら進んで退陣しない限り、軍事作戦は同氏を強制排除するものにならざるを得ません。実際、3首脳は「カダフィが政権の座にある限り、民間人を保護し政権に圧力を加えるために、NATOは作戦を継続しなければならない」と表明しています。
3首脳の主張は、民間人保護を理由にして、外部からの軍事力による体制転換を正当化しようとするもので、国連憲章に反し、重大です。
軍事介入で主権国家の体制を転換しようとするのは、イラク戦争をはじめ過去の軍事介入の事例が示すように、問題の解決をより困難にします。
内戦の速やかな停止を
内戦を停止するうえで、中東・アフリカ地域のイニシアチブはとくに重要です。アフリカ連合(AU)の停戦と和平に向けた提案を、カダフィ政権は受け入れたと報じられました。反政府勢力が拒否したため今回は実らなかったとはいえ、平和的解決の可能性を指し示しています。
軍事作戦の強化は当面の事態を悪化させるだけでなく、将来にわたって困難をもたらします。国際社会は、外部からの軍事介入を停止するとともに、内戦の速やかな実効ある停止と平和的手段による解決に向けて、努力を強める必要があります。
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