2011年4月23日(土)「しんぶん赤旗」
“原発埋蔵金”を賠償に
天下り団体の積立金3兆円
民間研究所提言
東京電力は福島第1原発事故で避難住民らに、賠償金の仮払いとして1世帯あたり100万円の支払いを決めました。農畜産業や観光など被害は広範囲に及び、賠償額は巨額にのぼるとみられ、増税や電気料金という形で国民に新たな負担を求める動きも出るなか、原子力関連法人の「『原発埋蔵金』を充てるべきだ」という声があがっています。
理事長は元東電役員
「原発埋蔵金」というのは、公益財団法人「原子力環境整備促進・資金管理センター」が、使用済み核燃料の再処理に備えて積み立てているお金のこと。並木郁朗理事長は、元東電執行役員(原子力・立地本部副本部長)で、専務理事と常勤の監事はともに経産省ОBという典型的な天下り団体です。経営陣とは別に最高意思を決定する評議員も10人中、8人が中部電力副社長や関西電力常務はじめ原子力関係の財団や研究機関のいわゆる「原子力村」出身者です。
同センターは放射性廃棄物の処理・処分に関する研究を目的に、1976年に設立された財団。「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」にもとづいて電力会社が支出した積立金の管理・運用業務を行っています。
いわば、プルサーマルなど、危険性が高いプルトニウムが入った燃料を一般の原子炉で燃やすなど、プルトニウム利用の「核燃料サイクル事業」の推進を前提にした財団です。重大な事故を起こした東電福島第1原発の3号機は使用ずみ核燃料を再処理して加工した核燃料(MОX燃料)を使っていました。
同センターの2011年度事業計画書によると、放射性廃棄物の最終処分の積立金は年度末に約8374億円、再処理の積立金は約2兆7357億円、あわせて3兆円を超えると見込んでいます。
この3兆円にのぼる積立金を原発事故の賠償に充てるべきだと主張しているのは、代替エネルギー研究で知られる「環境エネルギー政策研究所」(飯田哲也所長)です。
5日に発表した提言「3・11後の原子力・エネルギー政策の方向性〜二度と悲劇を繰り返さないための6戦略」のなかで、補償にあたっては、同センターの積立金を優先して充当することをあげています。また、「原子力関連の独立行政法人や公益法人を徹底精査し、補助金を全面的に引き上げるとともに、積立金等がある場合、それを充当する」ことを求めています。
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