2011年4月23日(土)「しんぶん赤旗」
主張
復興財源に消費税
人災に人災を重ねる庶民増税
政府・民主党が東日本大震災の復興財源として消費税増税を検討しています。消費税率を3年程度の間、3%引き上げる案が浮上していると報道されています。
“広く国民で負担するため”としていますが、消費税は着の身着のままで避難した被災者に、とりわけ重い負担となります。
消費税の直接の納税義務者は事業者です。事業者は一定の売り上げがあれば赤字でも自腹を切って消費税を納税しなければなりません。何とか事業を再開して雇用を守りたいと汗を流す中小業者の努力に水を差す酷税です。
被災者に重い負担
政府・民主党は増税分を後で被災者に還付する仕組みを想定しているとも伝えられています。
しかし、消費税は買い物のたびに払わなければならず、被災者には1年後や数カ月後の還付を待つ余裕はありません。多数の被災者が全国各地に避難している現状では、還付そのものも困難です。被災地は東北にとどまらず、「余震」によって甚大な被害を受けた地域もあります。これらの地域はどうなるのか。自腹を切らされる中小業者は還付の対象にもなっていないのではないでしょうか。
普段は消費税増税を主張している財務省出身の税制の専門家も、消費税は復興財源の対象から「外すことが望ましい」と論じています(森信茂樹・中央大学教授)。森信氏は東西ドイツ統合の際の復興資金として創設された「連帯付加税」が消費税を「付加税」の対象から外したことに先例を求め、次のようにのべています。「(消費税を外したのは)旧東ドイツ国民にも負担となることや、所得の低い人に大きな負担となる逆進性への懸念があったためであろう」
消費税の増税は被災者の生活再建と被災地の産業復興の大きな障害になります。被災者支援の遅れ、津波への備えも事故後の対応も怠って深刻化させた原発事故という重大な人災に、さらに人災を重ねる無謀な財源策です。
復興財源は、まず来年度予算を抜本的に組み替えて、不要不急の無駄を削ってつくるべきです。阪神、京浜の大型港湾に10年で5500億円をつぎ込む国際戦略港湾事業を削って被災地に回す―。米軍「思いやり」予算、原発の建設・推進経費、政党助成金をやめる―。法人税減税、証券優遇税制の延長など2兆円の大企業・大資産家減税をやめる―。高速道路無料化と子ども手当の上乗せの中止を含めると年間5兆円の財源を確保できます。
持てる力を結集し
さらに財源として244兆円に上る大企業の内部留保など、使い道がなくて滞留している民間資金を活用する手だてをとるべきです。投機資金の攻撃から守るために通常の国債とは別枠で、金融市場を通さない「震災復興国債」を発行し、大企業を中心に引き受けてもらうやり方です。
大企業も大資産家も次々と震災復興の義援金に協力しています。日本経団連の米倉弘昌会長は復興資金のためには「法人税減税をやめていただいて結構」と発言しています。復興国債にも協力してくれるはずです。
国を挙げて復興を支えるためにも逆進性の強い消費税はふさわしくありません。国民や企業が負担能力に応じて負担し、持てる力を結集して支援に当たるべきです。