2011年4月20日(水)「しんぶん赤旗」

原発事故 そこが知りたい

老朽化した炉の危険

金属・熱疲労 侵食・腐食発生

原子炉に亀裂入りやすく


Q 東京電力福島第1原発1号機は古い原子炉らしいけど?

  1号機は、1971年3月に営業運転を開始して以来、40年が経過しています。原発が安全に運転できるのは、当初30年が目安とされてきました。本来なら廃炉に向け運転が停止されているべき原発でした。

 現在稼働中の原発には70年代に建設されたものが多くあり、営業運転開始から30年を超えています。しかし、廃炉には膨大な費用がかかることや、新たな原発の立地や増設が地元の反対で難航していることなどから運転が続けられています。

 政府は、99年に、福島第1原発1号機など、70年前後に運転を開始した3基の寿命延長計画を認め、2005年には原発の運転を60年間とすることを想定した対策をまとめました。

 民主党政権になってからも、営業運転開始以来40年を迎える原発の運転継続を認めるなど、老朽原発をより積極的に酷使する姿勢を示しています。

Q 老朽化で心配されることは?

  原発の機器は運転中、高温高圧、高い放射線という過酷な状況に置かれています。振動などによる金属疲労、温度が繰り返し激しく変化することで起きる熱疲労、そのうえ冷却水や蒸気による侵食・腐食が発生します。

 さらに、原発特有の問題として、放射線の問題があります。原子炉では運転中に発生する高エネルギーの中性子を受けて、鋼鉄の「粘り気」が弱くなる脆性(ぜいせい)劣化が起こります。このため原子炉圧力容器の鋼鉄も長時間の運転に伴って、粘り強さが減少し、もろく亀裂が入りやすくなります。

Q これまで老朽化した原子炉でどんな問題がおきているの?

  日本には30年を超えて運転を続けている原発が、福島第1原発の1〜6号機を含め、計19基あります。特に、敦賀原発1号機と美浜原発1号機は40年を超えており、特別に老朽化が懸念されます。

 04年に死傷者11人を出した美浜原発3号機の蒸気噴出事故は、老朽化による配管の減肉を放置していたことによるものです。

 福島第1原発1号機では99年、原子炉内にある非常用炉心冷却系の配管にひびが入っていることがみつかっています。緊急時に働くとされている「多重防護」の機能が、実際に働くのか信頼性が問われる事態でした。

 このほかにも老朽化によって多くの問題が起きています。加圧水型では、格納容器を開口して蒸気発生器の丸ごと取り換え工事という大手術を余儀なくされる原発が続出しました。

 沸騰水型では、水流仕切り板(シュラウド)にひび割れが多くの原発で発生し、取り換えが行われました。これらの補修工事はいずれも、建設当初には想定されていなかったものです。交換は、非常に強い放射線のもとで作業が行われました。

 老朽化した炉を使い続けることは、安全性の上でも被ばくを増やさないためにも問題があります。

 さらにこうした原子炉は技術的にも古く、耐震性の科学的評価も十分ではありません。

表




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