2011年4月19日(火)「しんぶん赤旗」

主張

米原子力艦船

重大事故起きない保障はない


 東京電力福島第1原発の最悪の事故を目の当たりにして、原発が立地する自治体だけでなく、米軍の原子力艦船が配備され寄港する自治体でも、住民が核事故への不安を募らせています。

 横須賀基地(神奈川県)は米原潜の寄港だけでなく原子力空母ジョージ・ワシントンが配備され、佐世保(長崎県)、ホワイトビーチ(沖縄県)両基地も原潜寄港地です。いずれも核事故がおこれば被害は甚大です。原発の「安全神話」が崩れた以上米国いいなりに原子力艦船の配備・寄港を許してきた方針も根本から問い直すべきです。

崩れた「多重防護」

 米政府は原子力艦船の原子炉は戦闘に耐えられるよう、「4重の防護壁」によって安全が守られているとくりかえしてきました。日本政府に示した米側資料は、核燃料、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、船体の四つが防護壁だと書いています。原発は、核燃料、燃料被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋という「5重の壁」で覆われているから「安全」だといってきたのが福島原発事故で崩れたのです。米政府が主張する「4重の防護壁」が万全で、原子力艦船だけは安全だという言い分をうのみにすることができないのは明らかです。

 米側が米原子力艦船の原子炉を「安全性について確立された実績」があるといっているのも通用しません。今回の福島原発事故だけでなく、これまでの世界の原発事故をみても、原子炉を使って核エネルギーをとりだす技術は未完成です。原子力艦船の原子炉は「加圧水型」で福島原発の「沸騰水型」とは違いますが、同じ「加圧水型」の関西電力美浜原発(福井県)でも事故を何度もおこしています。「加圧水型」の原子炉だから事故を起こさないという言い分はなりたちません。

 実際、米原子力艦船自体がこれまで何度も重大な事故をおこしています。原潜の「炉心溶融」一歩手前の大事故や、1次冷却水漏れで放射性物質が外部に拡散する危険がある事故もありました。横須賀基地を母港とする空母ジョージ・ワシントンと同じクラスの空母ステニスが座礁して、冷却水取水口が目詰まりして原子炉が緊急停止した事故など、あげればきりがありません。

 米側資料が「50年以上」「一度たりとも放射能の放出を経験することなく」などといっているのは、重大な事故を覆い隠すごまかしの説明でしかありません。

配備・寄港やめさせよ

 米原子力艦船の配備や寄港を認めつづけるかどうかは、横須賀や佐世保、沖縄の住民だけでなく、首都圏などに住む多くの国民の安全にかかわる重大問題です。米艦船の検証もせず、米側の説明をうのみにするだけの対応では国民の安全を守れません。

 米原子力艦船の配備・寄港はもともと日本全土に軍事基地網をはりめぐらせた、憲法違反の日米軍事同盟にもとづくものです。日米軍事同盟を維持・強化するために日本国民を核事故の危険にさらすことは絶対に許されません。

 福島原発事故は、安全を軽視してきた原発政策の見直しを余儀なくしています。原発の廃止や見直しはいまや多くの世論です。米原子力艦船だけは例外だというのが、許されないのは当然です。





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp