2011年4月18日(月)「しんぶん赤旗」
笠間焼 復活「元気を発信」
窯も作品も壊れたけれど…陶芸家たち 立ち上がる
茨城県笠間市を中心に隣接町村含み300軒の窯元や陶芸家が担う笠間焼。東日本大震災の震度6強の地震で、多くの窯と作品が被害を受けました。この地で、「がんばろう東日本! 笠間から元気を発信します」をスローガンに29日から開かれる陶炎祭(ひまつり)の準備がすすんでいます。(川田博子)
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「地震があった日は市内の陶器販売店で開催中の妻との2人展の7日目。駐車場で、どんと突き上げられた後、激しく揺られた」―2代続く作陶家の田山健司さん(46)は、大震災をこう振り返ります。
1年に1度の2人展のために丹精して作り上げた作品が割れ、「妻は泣いていました」。工房では大、小2基の登り窯が崩れ、電気窯とガス窯もゆがみで扉が開かなくなりました。
同市では家屋5468棟が全壊・半壊を含む被害を受け、崩れ落ちたブロック塀や瓦が道をふさぎました。
東北にエール
県工業技術センター窯業指導所によると、19%の窯が全壊し、55%の窯が半壊・一部壊。製品・製作途中の品物の中で、破損しなかったのは3%でした。被害額は想定できず、震災10日後には、事業所の3割が「再開のめどがたたない」と答えました。
同市では毎年のゴールデンウイークに、笠間焼協同組合が陶炎祭を開催。29回目の昨年は期間中、全国から33万人が来場しました。
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今年度、同祭実行委員長を務める田山さんは、「当初は『窯が壊れて、作品を作り直せない』と中止を求める声がありました」と言います。話し合いを繰り返し、「被災者である自分たちが足を踏み出すことが、東北に『一緒に頑張ろう』のエールを送ることになる」と、開催を決定しました。
笠間焼協同組合の川野輪和康理事長は、「品物が割れたなら、作ればいい。祭りを開くことが東北への手助けになると思う」とのべます。
開催を知った全国のファンから、「笠間に行ったことがないが、今回はぜひ行きたい」「今年はとくに楽しみだ」など多数の声が届きました。
「重要な産業」
同市観光課も、「笠間焼は、経済・観光面で市の重要な産業。開催をバックアップしたい」と話します。
「がんばろう東日本! 笠間から元気を発信します」をスローガンに、窯元たちは窯を貸し借りして作品を焼き始めています。田山さんも、住民の「日常使いの食器が割れてしまった」の声にこたえ、茶わんや皿を出品します。
「私たちが真摯(しんし)に作品を作り続けることが、東北を励まし、震災に負けない力を未来につなげることになると思います」と話します。