2011年4月18日(月)「しんぶん赤旗」

政府備蓄米 震災に放出せず

来年 国産米不足の恐れ 「非常時、減反見直しを」の声


 東日本大震災では、日本の主食のコメを作る水田が甚大な被害を受けました。地震・津波に加え、東電福島第1原発の放射能被害で作付けできない地域もあります。「国産米不足の危険がある。非常事態に対応して生産計画を見直すべきだ」との声が関係者から上がっています。


水田流失、用水破壊

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(写真)大震災の被害を受けた水田=福島県南相馬市

 農水省は3月末段階で、衛星写真をもとに青森県から千葉県までの太平洋沿岸で流失・冠水した水田は2万ヘクタールと推計しています。さらに水田側面の崩壊や用水路、パイプラインなどの被害も加わります。

 各県の担当者に実情をききました。

 農水省の調査では105ヘクタールの被害推計だった千葉県では、「利根川流域を中心に用水パイプラインの破損などで、収量が減る水田もふくめ2万ヘクタールに影響がある」といいます。茨城県では、「土地改良区で聞き取りした限りで1000ヘクタールの被害」といい、宮城県では「約1万ヘクタールの水田が被害。最終的には5000ヘクタールで作付けできない」という状況です。

 長野県、新潟県などでも地震被害が出ています。農水省は「全容は調査中」(防災課)としています。

 1ヘクタールで約5トンの収穫が見込まれますが、分かっているだけで4万ヘクタール以上が作付け困難になります。

 福島県では津波被害にくわえ、東電福島原発の土壌汚染で作付け制限がおこなわれることになります。

29万トンの減産計画

 今年の米はあるにしても来年はどうなるのか。

 政府は、今年産の主食用米の生産目標を前年実績にくらべ29万トン少ない795万トンに設定して各県に配分しています。

 水田で大きな被害が出ているのに、減産計画を見直そうとしません。県内・県間調整にまかせるとの態度です。

 宮城県では県内で調整しても生産計画面積を2000ヘクタールも下回ることが分かり、他県に作付けを依頼しています。福島県も6500ヘクタールを県外調整する見通しを農水省の筒井信隆副大臣が明らかにしています。

 計画どおり生産できたとしても、来年6月末の民間在庫の見通しは195万トンしか残りません。しかも在庫の米も、東北の倉庫が津波に襲われ「数万トンの被害」(農水省計画課)が出ています。

 米の流通に詳しい農民連の横山昭三さんは、これらの民間在庫について、来年9月下旬に食べつくしてしまう少ない量だと指摘。「非常事態であり、作れるところは米をつくるべきだ。仮に過剰になっても米価が安定する対策をとる必要がある」と指摘します。

被災地で怒りの声

 また、政府米在庫は100万トン程度ある計算ですが、古米が多く一部は飼料にまわさざるを得ません。

 備蓄米の役割にも批判が出ています。「不作時に放出する米」(食糧部計画課)として、災害用に使わないとされています。

 実際、今回の大震災では被災地に米がない状態が続いていたのに政府米は供給されていません。東京都内の集荷業者の役員は「被災地では『災害時に役立たない備蓄米とはなんだ』の怒りの声があった」といいます。

 農民連は、会員や農協に呼びかけてこれまで30トン以上の無償支援をしています。横山さんは、「被災者支援分は生産数量の枠外にして、生産を増やすべきだ」と提案します。





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