2011年4月17日(日)「しんぶん赤旗」
主張
被災地復興
生活再建こそ土台にすべきだ
政府が「復興構想会議」(議長・五百旗頭(いおきべ)真防衛大学校長)をスタートさせるなど、東日本大震災からの復興をめぐる議論が始まっています。被災地はいぜん行方不明者の捜索が続き、十数万人が避難生活を続ける深刻な状態です。がれきの処理や電気、水道などインフラの復旧もまだ途上です。被災者支援や被害復旧の手を緩めることなく、被災者の生活再建と地域の再生を土台とした復興策づくりが求められます。
被災者支援を最優先
災害から立ち直るには、被災者への緊急支援から復旧、復興へと段階を踏むのが一般的ですが、未曽有の災害となった東日本大震災の場合は被災から1カ月以上たっても、被災者への緊急支援が大規模に求められているのが大きな特徴です。家族や知り合いの安否も明らかにならず、不自由な避難所暮らしが続く中で、被災者の生活は物理的にも精神的にも、文字通り限界です。政府が「復興構想会議」に提出した資料でも、「届け出のない」行方不明者や市町村などが設置した避難所以外の避難者、被災者は「不明」とするありさまです。被災者支援の手はいささかも緩めることが許されません。
停電や断水、道路や港湾などの被害も深刻で、復旧にはまだ程遠い状態です。住民が日常の生活を取り戻せるよう、インフラの回復や農地や漁港などの復旧を急ぐことも、喫緊の課題です。
これから本格化する被災地の復興にあたっても、まず土台にすえるべきなのは、こうした被災者の生活再建と地域の再生です。地震や津波で住宅が奪われた被災者に住まいを保障すること、被災者個人や自治体を支援すること、農業や漁業、水産業など地域の産業を支援し、雇用を確保すること、学校や病院など公共施設を整えることなどが欠かせません。復興案づくりも、国や自治体がまず被災者の声に耳を傾け、その意向を生かして被災者自身の活力を引き出し、後押しすることです。国が一方的な「復興」計画を持ち出し、自治体や住民の意見も聞かず押し付けるなどは、絶対に許されません。
阪神・淡路大震災では、国や兵庫県、神戸市などが一方的な「再開発」や空港整備など大型開発の計画を持ち出し、住民に押し付けたことが大問題になりました。住民の暮らしの再建が遅れ、住み慣れた地域から切り離された被災者の生活難や「孤独死」が相次ぎ、「復興」後の格差の拡大が生じたのです。こうした誤りを繰り返さないためにも被災者の願いにそった震災からの復興が不可欠です。
東日本大震災の被災地では、東電福島第1原発の事故が重なり、二重三重の苦しみとなっています。復興策づくりではこの問題に向き合うことも重要です。原発周辺からの避難者や出荷を規制されている農家、漁業者などへの支援と賠償を急ぐとともに、これまで原発建設に依存してきた地域経済についても、見直しが迫られます。
命と暮らし大切にする
被災地の復興には長い年月と費用がかかります。「復興財源」と称し消費税を増税するなど、被災者に負担を押し付けるのは論外です。被災者本位をつらぬき、被災者の生活再建と地域の再生を実現してこそ、復興を通じて国民の命と暮らしが大切にされる社会へ前進していくことも可能になります。