2011年4月16日(土)「しんぶん赤旗」

震災国債 日銀引き受けどう見る

戦費調達の苦い経験 財政規律失う


 東日本大震災からの復興の財源として、民主党が「震災国債」を日本銀行に引き受けさせることを検討するなど、国債の日銀引き受けが議論になっています。(山田英明)


民主党チームが検討

 民主党の特別立法チームがまとめた「復旧復興対策基本法案」(素案)は、必要な財源を確保するために、「震災国債」について「日銀引受けも検討すること」と明記しました。

 一方、与謝野馨経済財政担当相は、日銀による新規発行国債の引き受けは、「日銀法自体が想定していない」と指摘。財政規律を無視した行為が、政府と日銀の信用を失わせ、長期金利に跳ね返るとして、「ありえないことだ。絶対にそういうことはさせない」と強く反発しました。

 野田佳彦財務相も「政府が検討していることはない」と否定しています。

財政法で禁止を明記

 国の財政のあり方について定めた財政法は、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」(第5条)と明記。政府が日本銀行に国債を引き受けさせることを禁止しています。

 さらに日本銀行について定めた日銀法は、第2条で「通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」と述べ、同3条で「自主性は、尊重されなければならない」とし、政府からの独立がうたわれています。

 なぜ、財政法で日銀による国債の引き受けが禁止されているのでしょうか。野田財務相は1日の記者会見で、「歴史的な経緯も踏まえて(日銀引き受けを禁止している)第5条ができている」と指摘しました。

 歴史的な経緯とは―。財務省の担当者は、「戦前、戦中に政府が日銀に国債を直接的に引き受けてもらい戦費を調達した歴史がある。結果、当時のインフレ率が100倍以上になったという苦い経験だ」と指摘。「こうした経緯を踏まえ、1947年に財政法が制定され、原則として国債の日銀引き受けを禁止するという規定が設けられた」と語りました。

“通貨の信認を毀損”

 日本銀行の白川方明総裁は7日の記者会見で、日銀による国債引き受けは、「わが国への信認、通貨の信認を毀損(きそん)する」と強調。「いったんはじめるとやがて通貨の増発に歯止めがきかなくなり、激しいインフレを招き、国民生活や経済活動に大きな打撃を与える」「日本経済が震災で大きな影響を受けているだけに国際的、国内的な通貨への信認維持が極めて重要だ」とのべ、国債引き受けを否定しました。

 日銀の国債引き受けについて、金子貞吉中央大学名誉教授は、「戦前の歴史が教訓になります。外債も発行していないいま、なぜ日銀引き受けが必要なのでしょうか。政府が安易に資金調達できて、財政規律を失います」と疑問を呈しています。

 その上で金子氏は、「市場での国債の価格が急落し、長期金利が高騰し、ひいては利子負担は増え、借換債の発行も困難となり、国家財政そのものが行き詰まるでしょう。そのツケを負わされるのは庶民です」と指摘しました。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp