2011年4月16日(土)「しんぶん赤旗」
危機打開へ 共産党の論戦と行動
原発問題 「安全神話」ただし転換迫る
東日本大震災と原発事故という二つの重大事態が発生してから1カ月余。日本共産党は現地での救援活動や全国での募金活動を行うとともに、国会議員団が政府への提言や各委員会での質問を通じて現実の政治を動かしてきました。他党議員も、「すでに共産党の議員がとりあげていることですが」と前置きして同様の提案をすることも珍しくありません。日本共産党の論戦と行動、その後の対策の進展をみてみると―。
新増設中止と総点検
首相「白紙含め検討したい」
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東京電力福島第1原発の事故発生直後から、日本共産党は危機収束と避難者救援などで積極的な提起を繰り返し行ってきました。
志位和夫委員長は菅直人首相との会談(3月31日)で、安全最優先の原子力行政への転換を求め、原発の総点検を行うとともに、2030年までに「14基以上」の原子炉を増やす計画について、「きっぱり中止すべきだ」と要求。菅首相は「原発の総点検ももちろん必要だが、今後の原子力の利用について根本的に安全性の議論が必要だ」として、増設計画は「白紙というか、見直しも含めて検討したい」と表明し、内外で大きく報じられました。
独立した規制機関
政府、経産省から分離検討
志位氏は、日本が批准ずみの原子力安全条約に則して、原子力の推進機関と規制機関を分離し、強力な権限をもつ規制機関の創設を求めました。菅首相は「重大な反省が必要だ。指摘を受け止めて(体制の)あり方の検討が必要だ」と表明しました。
推進機関と規制機関の分離は、35年前から日本共産党が提起してきたことです。
政府は原子力安全・保安院を推進機関の経済産業省から分離させ、内閣府の原子力安全委員会と統合して規制機関とすることの検討を開始しています。
利益第一を批判
原子力安全・保安院長「甘さ深く反省」
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吉井英勝衆院議員は6日の経済産業委員会で、巨大地震と津波などによる全電源喪失が原発の炉心溶融を招くと05年から警告してきたことを指摘。「原発安全神話」を信仰し、国民の安全より企業利益第一に走ってきたことが重大事態をもたらしたと批判しました。
寺坂信昭原子力安全・保安院長は「甘さがあったことは深く反省している」と述べ、班目春樹・原子力安全委員長も「今回の事故を深く反省し、二度とこのようなことが起きないようにしたい」と表明しました。
対応の遅れ認め
さらに吉井氏は、事故直後、菅首相が視察のため4時間半も災害対策本部を離れ、その後も海水注入を命じるまで10時間以上もきちんとした対策をとらなかったことが、重大事態を招いたと指摘。海江田万里経産相は「法律にもとづく(圧力容器の水蒸気排出や海水注入などの)命令は日をまたいでのこと(3月12日)だった」と、対応の遅れを認めました。
明確な“人災”
大門実紀史参院議員は3月29日の予算委員会で、45年前に設けた津波被害の甘い「想定」を放置するなど、「『安全神話』に乗っかり、安全対策を怠ってきた。“想定外”ではなく、明確な人災だ」と批判。菅首相は「認識が間違っていたことは否定しようがない」と認めました。
海江田経産相は、津波などに備えた電源車の配備など、緊急時の電源確保を電力各社に指示しました。
副読本を批判
宮本岳志衆院議員は、13日の文部科学委員会で小中学生向けの副読本『わくわく原子力ランド』などを取り上げ、「“安全神話”にたった副読本は使わせてはならない」と批判。高木義明文科相は「見直していきたい」と答え、文科省のホームページからも削除されました。
環境調査要請
放射能汚染水の海洋放出問題では、市田忠義書記局長が「危機回避に力を集中することは当然だが、だからといって環境への負荷や人への影響について調査と対策を後回しにしてはならない」として、海水や魚だけでなく、プランクトンや海底生物なども含めた検査を要求。松本龍環境相は、「大変重要な指摘だ。環境省として検討したい」と答えました(14日、参院環境委員会)。
住民への仮払い要求
総務相「急がれるべきだ」
日本共産党は、原発事故で被害を受けた地域に対する支援が遅れた問題を重視し、汚染データの公開、避難先の確保のほか、風評被害を含むあらゆる被害に政府が責任をもって対応するよう求めてきました。
塩川鉄也衆院議員は5日の総務委員会で20万人に上る住民の実態を示し、東電の仮払いも含む賠償金の一刻も早い支払いを要求。片山善博総務相は「必要な生活資金の供与は急がれるべきだ」と答弁しました。東電は15日、1世帯あたり100万円(単身世帯は75万円)の仮払いを決定しました。
紙智子参院議員は、出荷制限を受けた農家への補償を要求(3月23日、予算委員会)。笹木竜三文科副大臣は「事故との因果関係が認められるものは適切な賠償を行う」と答えました。
大門参院議員は3月28日の予算委員会で、原子力損害賠償制度による農家などへの東電の補償には時間がかかるとして、政府の立て替え払いを要求。鹿野道彦農水相は「仮払いのような仕組みを検討中」だとし、野田佳彦財務相は、一義的には東電が支払うべきだが、まずは政府が肩代わりすると述べました。
推進の立場からも見直し論
「規制機関再構築」「原発からの脱却」
原発推進の立場に立っている首長やマスコミからも見直しの声が上がっています。
浜岡原発の増設問題などを抱える静岡県の川勝平太知事は「いまのまま進めることはできない」と発言(3月17日)。民主と自公相乗りの黒岩祐治神奈川県知事は「脱原発と太陽光発電導入をスピード感を持って進めたい」(10日)とのべました。
「マスメディアとして、原発の『安全神話』をつくることに加担した責任を自らの手で問い直さなくてはならない」(「東京」7日付コラム)との声も。「毎日」15日付社説は、「政策の大転換を図れ」との見出しで、津波対策の不備を指摘するとともに、「国の規制や監視体制も改革を迫られている」「完全に独立した規制機関を再構築すべきだ」、「長期的な視点で原発からの脱却を進めたい」と書いています。