2011年4月16日(土)「しんぶん赤旗」
放射性物質は1500億ベクレル
東電による海へ放出の汚染水
東京電力は15日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)から海へ放出した放射能汚染水に含まれていた放射性物質の量は1500億ベクレルだったと経済産業省原子力安全・保安院に報告しました。
東電は4日から10日まで、集中廃棄物処理施設に貯蔵されていた汚染水と、5、6号機の「サブドレンピット」と呼ばれる設備にたまっていた、放射能で汚染された地下水を海へ放出しました。報告によると放出した水の量は集中廃棄物処理施設からが9070トン、5、6号機サブドレンピットからが1323トンでした。
放射性物質の量は、それぞれの汚染水に含まれていた放射性のヨウ素131とセシウム134、同137の量を加えた結果だとしています。
東電は、放出を始める前に、放射性物質の量を1700億ベクレルと見積もっていましたが、放出した水の量が予定していた1万1500トンより少なかったため、放射性物質の量も少なくなったと説明。汚染水の放出で、沿岸や沖合の海水に含まれる放射性物質濃度に顕著な変動はなかったとしています。
おとなが近隣の魚類や海藻などを食べ続けた場合でも、年間被ばく量は0・6ミリシーベルトと評価されるとしています。一般人の許容量は1ミリシーベルトです。
解説
汚染水放出 全容明らかにせよ
東電は、放射能で汚染された水を海へ意図的に放出したことについて「やむを得なかった」「影響はない」などとしています。
しかし、放出が行われていた間、福島第1原発周辺の海水からは最高で国の濃度限度の2800倍に相当する放射性ヨウ素131などが高濃度で検出されていました。
また、今回報告された放射性物質の量は、放出した汚染水に含まれていたヨウ素131とセシウム134、同137の量を足しただけです。ほかの放射性物質については、種類も量も明らかになっていません。ヨウ素やセシウム以外の放射性物質でも、種類によってはたとえ量が少なくても、生物に影響を及ぼす可能性のあるものがあります。
放射性物質の量自体、放出前に採取した試料を測った値に基づくもので、放出の途中で試料を採取して測定してはいません。
放射能汚染水を海へ放出するという前代未聞の行為に漁民をはじめとした多くの国民が抗議や批判の声をあげました。諸外国からも反発の声があがりました。東電と国は、放出した汚染水の全容についてすべて明らかにするとともに、海の汚染の実態と魚や海藻などへの影響を調査し、公表する責任があります。(間宮利夫)
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