2011年4月14日(木)「しんぶん赤旗」

原発事故収束に責任果たせ

衆院内閣委 吉井議員の質問


 13日の衆院内閣委員会で福島第1原発事故での政府の対応をただした日本共産党の吉井英勝議員。「低レベル」放射性物質の放出、大規模災害で活用されない情報収集衛星などの問題点が、あらためて浮かび上がりました。


放射性物質の海洋投棄

吉井 明白にロンドン条約違反

官房長官「今後こうしたことないよう見直す」

 吉井氏は、「低レベル」汚染水を放出したとしながら、「低レベル」かどうかを判断するためには「核種」(放射性元素の種類)ごとのデータを明らかにするよう求めました。

 経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、発表ずみの放射性ヨウ素・セシウム以外は「少し時間がかかる」としか答えられませんでした。

 吉井氏は「何が放出されているのかさっぱり国民に公開されていない。東京電力いいなりで、とんでもない話だ」と批判しました。

 吉井氏は、海洋汚染防止条約(ロンドン条約)が、陸上で発生した高・中・低レベルの放射性物質の投棄による海洋汚染の防止義務を定めており、条約違反だと追及。枝野幸男官房長官は「やむをえない措置」だと強弁しました。

 吉井 私は1996年5月16日の科学技術委員会で、放射性物質の外部流出や海洋汚染をさせない対策は必要だと主張した。当時の宮林(正恭)科学技術庁原子力安全局長は、「『多重防護の思想』で厳格な安全審査をやっている」と答弁した。しかし、今回は放出をやっている。ロンドン条約や原子炉規制法などの国内法に違反する。

 枝野長官 津波に対する準備をしてこなかったこと、放射性物質を含んだ水が海洋に拡散しないように準備してこなかったことは適切な対応ではなかった。今後、こうしたことのないよう見直しをさせているところだ。

 吉井氏は、「明白にロンドン条約違反だ。こういうことは絶対に許してはならない」と強調しました。

地震加速度・元素の種類など

吉井 基礎データ何も公表ない

官房長官「あらためて公表を指示する」

 吉井氏は、原子力安全・保安院が、緊急消防援助隊に現場の消火栓・消防用水が使える状態だったのかどうかを伝えていたのかとただしました。

 寺坂院長は、「消火栓の状況に関しては、必ずしも十分な把握ができていない部分があった。消火栓が使用ができると考えていた」と答弁。東電は当初、真水を使っての冷却を検討していましたが、結局、消防用水は使えないことが分かりながら廃炉を恐れて、海水による冷却を始めるまで時間がかかってしまったことが明らかになりました。

 吉井氏は、「東電の判断は、海水を注入すれば廃炉にしなければならず、株主代表訴訟等で訴えられることを恐れるという個人的な思惑や東電の利益をどう守るかということが働いて、冷却が非常に遅れたと思う。これは重大な問題だ」と指摘しました。

 吉井氏は、原発内の地震の加速度さえ明らかにされていないなど、「基礎的なデータがまだ何にも公開されていない」と指摘。「破損箇所のデータ、地震動を含めた基礎的なデータを全部公開しないことには、学者・研究者もエンジニアも(事態打開の)対策について協力のしようがない」と述べました。

 枝野長官は、「政府、東京電力が出していない資料があるとすれば許されない。もっているデータは公表するよう、あらためて指示する」と約束しました。

情報収集衛星の画像

吉井 大災害救援になぜ使えぬ

官房長官「外交・防衛上の配慮は最小限に」

 吉井氏は、日本政府が8000億円以上をつぎ込んでいる情報収集衛星(スパイ衛星)が「大規模災害への対応」を重要な目的の一つに掲げながら、実際にはどのように活用しているか明らかにされていない実態を告発しました。

 吉井 なんのための情報収集衛星なのか。大規模災害に備えて役割を果たすのが、国民の税金を使ってきた情報収集衛星の本来の目的ではないのか。

 枝野長官 情報収集衛星は安全保障目的にも運用している。個別具体的な運用実態について答えることは、安全保障上の観点からできないが、利用できるものについては、しっかりと利用させていただいている。

 吉井氏は、道路もなくなった津波被災地では衛星画像は重要だと述べたうえで、「放射線を浴びながら活動している人たちに衛星写真でないとわからない画像を提供して働けるようにするとともに、学者や研究者のみなさんにも公開するなどして、いろんな知恵を結集しなければ、情報収集衛星など“ガラクタ”にすぎない」と批判しました。

 しかし、枝野長官は「外交、防衛、安全保障上の観点から、具体的な能力、運用についてお答えできない」と繰り返しました。

 吉井氏は、「情報収集衛星に98年度から今年度予算も含めて8248億円も使っているのに、大規模災害対応で全く活用できていない。こんな予算の無駄遣いはゼロにして、被災地の復興予算に回すべきだ」と主張。これに対しては枝野長官も「指摘の趣旨は非常に理解する」と述べ、外交、安全保障上の配慮は「必要最小限にとどめて、最大限に活用するよう指示する」と答えました。

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