2011年4月14日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
東京のサクラは、こずえから散り始め若葉が目立ちます。サクラ前線は、ほぼ平年並みの早さで北へすすんでいます▼開幕を遅らせていたプロ野球も、今季の試合が始まりました。サクラ、大地を彩る春の草花、白球。野球の普及につくした明治の俳人、正岡子規の野球にまつわる代表句も、春を詠んでいます。「まり投げて見たき広場や春の草」▼開幕初日、本拠地の仙台が大震災にあった東北楽天ゴールデンイーグルスは、勝って幸先のいい滑り出し。被災者の気持ちによりそってセ・リーグの開幕延期を訴えた選手会の新井貴浩会長は、阪神タイガースの4番打者として、打って走っての大活躍でした▼「小さい力かもしれないが、野球で勇気を与えられると信じたい」。新井選手の話です。1995年のオリックス・ブルーウェーブを思い出します。阪神・淡路大震災があった年。神戸が本拠地だったオリックスは、「がんばろう神戸」を合言葉に開幕戦から快進撃を続け、悲願のリーグ優勝をなしとげました▼1995年の記録をひもとくと、オリックスの選手たちの気迫が伝わってきます。野田浩司投手が1試合19奪三振の新記録をつくれば、佐藤義則投手は41歳間近で史上最年長ノーヒット・ノーランを達成しました。打率3割4分2厘のイチロー選手は、ホームランも25本かっ飛ばしました▼選手のひたむきな姿が人々を励まし、ファンの応援が選手を奮い立たせる。市民とともに歩んで成り立つプロ野球の、原点でもあるでしょう。