2011年4月13日(水)「しんぶん赤旗」

「在宅被災者」の孤立深まる

高齢・障害者に支援急いで

茨城・神栖 6700戸断水


 約6700戸の断水が続く茨城県神栖(かみす)市。東日本大震災の影響でトイレや風呂を使えない不自由な生活を強いられるなか、高齢者や障害者が孤立を深めています。姿の見えにくい「在宅被災者」への支援が急がれます。


 市営住宅で暮らす男性(80)は、両膝に障害のある妻(71)と老老介護の2人世帯です。

 台車代わりに妻の車いすにポリ容器を乗せて、給水所を往復します。男性も13年前に心臓手術をして身体障害3級です。この1週間、「疲れた。きつい」と口にする機会が増えました。

 妻は「市は障害者が入居していると知りながら、なぜ『大丈夫か』と様子を見に来ないのか。夫が倒れたら2人で死ぬしかない」と訴えます。

 断水の復旧率は76・7%。市の飲料水の2分の1をまかなう鰐川浄水場が地震による液状化で損壊し、仮設管での復旧は4月下旬までかかる見通しです。また2000戸以上で下水道の使用を制限しています。

 市内で高齢者だけの家庭は約2300世帯(うち独居は約1200世帯)なのに対し、高齢者宅への飲料水の配達はボランティアが行う1日10件前後にとどまります。市は「独居高齢者への民生委員の訪問を強めているが、困窮の実態を把握できていない部分はある」(長寿介護課)と説明します。

 「ちょっとそこまで行くのにつかまらせて」と玄関先から声をかけてきたのは、独り暮らしの足が不自由な女性(70)。買い物に行こうと呼んだタクシーのドアまで3メートル。周囲に付き添う人は見当たりません。

 震災後は上下水道が使えないので自炊ができず、女性は市外の親戚が届けるスーパーのお弁当と飲料水で命をつないできました。しかし、それも最近は途絶えがちです。洗濯できないため、食べこぼしのあとがついた服を仕方なく着ています。

 疲れた様子で女性が言います。「誰かが避難所の食事を持ってきてくれたら、みんな助かるんだけど」 (本田祐典)





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