2011年4月13日(水)「しんぶん赤旗」

原発被害 補償直ちに

東電と国が責任持って

周辺住民・農漁業に打撃


 東京電力福島第1原子力発電所事故による放射能被害は周辺住民、農業、水産業に深刻な打撃を与えています。東電と国による一刻も早い補償が求められています。(山田俊英)


 原発事故被害に対する賠償について定めた「原子力損害賠償法」(原賠法)によれば、原子力事業者(今回の場合、東電)が無限の賠償責任を負います。被害額がいくらになろうと東電が全額賠償する義務を負います。

国が肩代わり

 一方、東電は国(文部科学省)と「政府補償契約」を結んでおり、地震や津波に起因する原発事故の場合、原発1カ所(今回の場合、福島第1原発)につき最大1200億円までの補償金(賠償財源)を政府が東電に支出します。東電はここから被害者に賠償します。

 1200億円を超える損害額について法律上は東電に支払い義務がありますが、それも国が肩代わりすることが可能です。原賠法は、賠償額が1200億円を超え、「必要があると認めるとき」、政府が国会の議決の範囲内で「必要な援助を行う」と定めています。

 菅直人首相も1日の記者会見で「東京電力の第一義的な義務・責任を超える場合には、やはり政府としても責任を持って対応しなければならないと考える」と述べ、東電支援の考えを示しました。

大株主の責任

 政府補償契約で東電の負担は毎年文科省に払う原発1カ所あたり3600万円の補償料だけ。保険制度のように見えますが、補償料は毎年、国庫に繰り入れられ、特別会計など特定の財源はありません。政府補償が必要になった場合は、新たな国庫負担が生じます。

 東電が自社の資力で賠償した場合も、賠償金をコストとして電力料金に上乗せすれば、利用者の負担となってのしかかってきます。国民への安易なつけ回しを許さないことが必要です。

 東電大株主の責任は免れません。東電の大株主には第一生命、日本生命、三井住友銀行、みずほコーポ銀行などが名を連ねています。第一生命は森田富治郎会長を東電の社外取締役として送り込み、経営陣の一角を担います。

 森田氏は清水正孝東電社長とともに日本経団連副会長も務めます。一体となって原発を推進してきた財界の責任は重大です。

賠償で裁判も

 原賠法によれば東電の賠償責任は「無限」と定められていますが、実際にどの被害まで賠償の対象とするかの指針を決めるのは文部科学省に設置された原子力損害賠償紛争審査会です。

 賠償に関して被害者と東電の間で紛争が生じた場合、審査会は和解の仲介にあたりますが、認定内容を当事者に強制することはできません。和解できない場合、法的手段としては裁判しかなく、被害者に多大な負担がかかります。

 日本共産党は3月31日、政府に申し入れた「被災者支援・復興、原子力・エネルギー政策の転換を―東日本大震災にあたっての提言」の中で、原発事故被害に対する全面的賠償を次のように求めています。

 「風評被害も含めた農業・漁業被害、原発事故で避難を余儀なくされている中小商工業者の被害にたいする全面的な補償と賠償を、東京電力と国の責任でおこなうことを求める。当面、東京電力に、被害を受けた農家や避難住民への補償仮払いを直ちにおこなわせることが必要である」

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