2011年4月13日(水)「しんぶん赤旗」

主張

プロ野球開幕

特別の思い込めたシーズン


 東日本大震災の中、特別の思いをこめたシーズンが始まりました。当初より約半月遅れての、今季のプロ野球の開幕です。

 セ、パ両リーグともにスタートした12日、北は札幌から山口・宇部まで6試合がたたかわれ、本拠地の仙台が被災した楽天は、千葉で昨季日本一のロッテと対戦し6―4で東北に勝利を届けました。各地でひびく球音が被災者の励ましとなり、社会に活力を取り戻す一助になることを期待します。

存在意義が問われた

 開幕に至るまでの曲折は、改めてプロ野球の存在意義を問いました。未曽有の大震災直後、早々と延期を決めたパ・リーグとは対照的に、セ・リーグは「野球で力を与える」と、予定通りの3月25日開幕を強行しようとしました。

 しかし、選手会労組や世論、ファンのきびしい反対にあい、対応は二転三転。結局、電力消費問題での行政側からの働きかけもあり、12日までの延期を決めました。

 その間、経営者側からは「開幕を延期するとか、プロ野球をしばらくやめるとかいうのは俗説」(巨人・渡辺恒雄会長=読売新聞グループ本社会長)などと、周りの状況判断ができない身勝手な発言が続きました。しかしそれは、国民のプロ野球への信頼を傷つけただけでした。

 そのなかで、世論やファンから支持されたのが、選手会労組の訴えです。新井貴浩・選手会長(阪神)を先頭に、球界、ファンが心を一つにして開幕を迎えるべきだという選手たちの主張は、多くの国民の心情に沿うものでした。

 7年前に球界再編騒動が起きたとき、プロ野球の「文化的公共財」としての役割が大きな問題になりました。応援してきた球団が経営側の都合によって突然消えてしまい、その地域からなくなってしまう。その横暴さにストップをかけようと立ち上がったのが選手会労組と、それを支えた多くのファン、世論でした。それ以来、プロ野球では地域密着型の球団づくりがいっそう進み、視線はよりファンに向けられはじめています。

 延びた開幕を待つ間、選手らは調整を続けながら各地で熱心に募金活動にとりくみ、楽天ナインは遠征の合間をぬって仙台に戻り、避難所を回って子どもたちを勇気づけました。国難ともいえるとき、ファンや国民に寄り添ってともに支えあう姿は、プロ野球選手の社会的な存在感を示しました。

 今月2、3の両日に開かれた復興支援試合で、選手会の新井会長は「たくさんの人に、野球のある国に生まれてよかったと思ってもらえるよう、全力を尽くしたい」と、今季にかける意気込みを口にしました。彼らにとって、みずからのプレーの意味を見つめなおす機会にもなりました。

過密日程への配慮を

 開幕の遅れに伴い、今季は過密日程になります。選手たちは覚悟を決めて臨んでいますが、過度の負担への配慮は当然必要です。

 23日にはプロサッカーJリーグも再開します。年間、数千万の人々が観戦し、テレビで楽しむプロスポーツです。日本共産党はプロスポーツ選手を「自覚的にスポーツ文化の遺産を受け継ぎ、新たな発展を切り開く存在である」と位置づけています。

 まさに、プロスポーツの真価が正面から問われるシーズンです。





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