2011年4月12日(火)「しんぶん赤旗」

主張

原発「安全対策」

電力会社任せで見直せるのか


 東日本大震災で東京電力福島第1原子力発電所の1〜4号機が重大な損害をこうむりいまだに収束のめどが立っていないうえに、その後の余震で東北電力の東通原発(青森県)や女川原発(宮城県)でも複数の電源が途絶える事態が明らかになり、原子力発電所の地震や津波への備えの不十分さが改めて浮き彫りになっています。

 経済産業省の原子力安全・保安院は非常電源の確保などをあわてて各電力会社に通知しましたが、原発の安全確保のためには電力会社任せでなく、政府が責任をもって安全最優先の原子力政策に転換していくことが不可欠です。

重大事態は政府も責任

 東日本大震災で外部電源も非常用電源も途絶え、冷却機能を失って燃料棒や原子炉そのものが損壊したとみられる福島第1原発は、地震や津波への備えを欠いていたことが明らかになっています。地震直後の対応の悪さとあわせ、まさに人災であることは明白です。

 しかもその後、7日夜の余震で東通原発でも外部電源が一時途絶え、ディーゼル発電機を使った非常用電源も2台が点検中で、動いた1台も燃料漏れを起こし停止する事態が起きました。女川原発では外部電源3系統のうち2系統が途絶え非常用電源の発電機も故障していました。原子炉が運転中なら最悪の場合、福島原発と同じように冷却機能を失いかねない重大な事態です。11日夕の余震では福島第1原発で臨時に設置した外部電源が切れる事態も起きました。

 原子力安全・保安院は大震災後あわてて地震や津波のさいの対策見直しを各電力会社に求め、今回問題になった非常用電源については、原子炉が停止中でも「2台以上」確保できるよう、保安規定の変更を指示しています。原子力安全・保安院の西山英彦審議官はこれまでの原発の安全対策について、「多重防護、5重の壁で絶対大丈夫だといってきたが、こういう事態になった」と“反省”してみせ、「全て見直す必要がある」と発言したと伝えられています。

 見直さないより「見直す」ほうがいいとはいえ、実態は電力会社任せで、まったく“人ごと”のような姿勢は問題です。もともと原発に大きく依存するエネルギー計画を立て、各電力会社に原発建設を進めさせたのは政府です。利益本位で安全を軽視した電力会社とともに、電力会社に建設を進めさせた政府の責任は重大です。

 地震や津波への備えに欠けたという点でも、政府が原発の建設を審査する安全基準そのものが大地震を想定しておらず、津波については最近まで、その被害想定自体を求めていなかったことが明らかになっています。「安全神話」に固執して危険を軽視した、政府自身の責任が問われるのは当然です。

推進と規制の分離を

 政府の原発行政が、原発建設を推進する機関と安全面から規制する機関が一体となってきたことも重大です。現在の原子力安全・保安院も、原発に依存するエネルギー計画を進め原発建設を推進する経済産業省のもとに置かれており、本来の規制機関としての役割を果たせていません。

 政府の原子力政策そのものを安全最優先に転換すべきであり、それを進めるためにも推進機関とは分離した独立の規制機関をつくり、強化することが不可欠です。





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