2011年4月11日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
延々とつづくがれきのなかを、毎日、夫を捜し回る気仙沼市の女性。潮風に油と魚の腐敗臭が混じる、変わり果てたふるさとを歩き続けています。陸前高田市の避難所で不明の母を思う3姉妹。学校再開が決まり、少しずつ周りに日常が戻るにつれ、「普通の生活が想像できない」と口をそろえます▼あのとき、から1カ月。簡単に「時」を区切ることにあらがうような被災者のきびしい現実があります。いまなお、たくさんの命の行方がわかりません▼親を失った子、子を亡くした親、最愛の人が突然いなくなった日々…。「時はすべてを癒やしてくれる」。そんな言葉が色あせてしまう状況でも、人は希望を失わずにいられるのか▼世界が驚き、称賛したのは、悲哀にくれた被災者たちの秩序正しい冷静なふるまいでした。支えあい、身や心を寄せあう、みんなで。あのときから、わたしたちの社会全体にも、連帯のきずなが太く、つよく、つながりはじめました。その輪は国境をこえてひろがり、闇を照らす光になっています▼そして、これから。被災者の抱く不安を、どう希望へとかえていくか。なによりも、一人ひとりの支えになる、政府の柔軟で機敏な対応が肝要です▼震災直後から現地で取材にあたっている本紙の記者は、実感をこめます。「ほんの少しでも先が見えること。どうやってがんばればいいのか、足をふみだす方向を指し示してほしい。それが、いまも余震が襲ってくるなかで必死に生きている被災者たちの願いです」