2011年4月9日(土)「しんぶん赤旗」
放射線量高い福島・飯舘村
残るか避難か 悩む村民
生命や健康を第一に考えて
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福島市内から峠を越え、盆地に広がる福島県飯舘村(人口約6千人)に入ると、放射線測定器の値が急上昇しました。8日午前、役場前で7〜8マイクロシーベルト。隣接する川俣町中心部の約10倍です。
同村のほとんどは、放射能漏れ事故が起こった福島第1原発から20〜30キロ圏(屋内退避区域)の外ですが、最悪の水準の数値が続いています。屋外に出続けたと仮定した場合政府が避難の目安にしている年間累積放射線量に、すでに達している地域があるとの調査結果も出されています。
しかし、政府による避難指示は出ておらず、村民は厳しい選択を迫られています。
7日の臨時行政区長会で菅野典雄村長は「危険地域なのになぜ避難させないのか、という声もあるが、村民の生命や健康を第一に考えながら、できる限りのことをやっていきたい」と述べ、当面は避難せず、村を守る考えを示しました。
同時に、(1)放射線の高い地域から、村内の比較的低い地域への避難を促す(2)3歳未満の乳幼児と保護者1人を福島市内に避難させる(3)小中学生の教室を川俣町に確保する―方針を示しました。
しかし、区長側からは「対応が遅すぎる。乳幼児だけでなく家族も集団疎開させるべきだ」「子どもたちに何かあれば村も終わる。自主避難をもっと進めるべきだ」と村の対応への不満が相次ぎました。
さらに強い不満の声があがったのが、通常は3月から始まる農作物の作付けの可否決定を延期したことです。
飯舘村では土壌から高濃度のセシウムとヨウ素が検出されました。セシウムは半減まで30年かかるとされています。
区長たちは「安全・安心な農産品を消費者に届けるのが自分たちの仕事。こんな状態で作付けなんてできっこない。早く停止を決めて、国と東京電力に全面的な補償を求めるべきだ」と口々に話します。
全面的な補償を求めるのは村も同様です。しかし、土壌汚染の明確な基準がないため、福島県などとの協議が必要、という見解です。作付けの延期は県の要請であり、「村が独自に作付け停止を決定した場合、補償が得られるかどうか不透明」(日本共産党の佐藤八郎村議)だからです。
菅野村長は「ここで村を出れば、もう戻ってこられない」との思いですが、複数の住民は言います。「今は村民の生命・健康が大事だ。20〜30キロ圏などといった設定を見直して一刻も早く避難指示を出すよう、政府に求めてほしい。原発事故が収束すれば、私たちは必ず戻って来る」
前出の調査結果を受け、学識者で構成される「飯舘村後方支援チーム」は、「30キロ圏の線引きにこだわらず、汚染状況に応じたきめ細かい対応・対策と支援」などが必要との提案を行っています。(竹下岳)
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