2011年4月8日(金)「しんぶん赤旗」
主張
大相撲場所開催
被災地とともに楽しめるのか
日本相撲協会は、八百長への関与で一挙に23人もの大量処分者を出したことから、3月場所に続いて、5月8日初日の夏場所(東京・国技館)も通常開催を断念、力士の技量審査場所として、入場無料で開催することを決めました。協会は今回の成績をもとに新番付を編成し、名古屋場所(7月10日初日、愛知県体育館)からの正常化を視野に入れています。問題はこうした開催で、相撲ファンが多いといわれる東日本大震災の被災地・東北地方を含め、全国が心から熱闘を楽しめるのかです。
八百長解明は道半ば
もちろん、久しぶりの土俵を喜ぶ力士やファンはいます。しかし八百長問題の全容が解明されていない中での「技量審査」に、ほんとうに意味はあるのでしょうか。
実際、協会の決定には「中途半端な感じで非常に後味が悪い」(横綱審議委員会・鶴田卓彦委員長)、「複雑。(時期尚早との意見も)当然あると思う」(玉垣親方=元小結智ノ花)などと相撲界からも戸惑いの声があがっています。
放駒理事長(元大関魁傑)は、本場所との違いについて、今回は「通常の興行ではない」ことを理由にあげました。しかし、もともと本場所とは日頃の鍛錬の成果を披露する技量審査の場です。力士の最大の目的も、そこで力を存分に発揮することにあります。本場所であれ、「技量審査」の場であれ、このことは変わらないはずです。
ほんらい土俵は、真剣勝負で、力と技をぶつけあう場です。そこで八百長がまかり通っていたからこそ、スポーツとしての大相撲の根幹が問われたのです。いくら興行ではないといっても、通常の本場所同様、取組の成績は正式な記録として扱われます。たとえば、白鵬が優勝すると、朝青龍に並ぶ史上最多の7連覇になります。しかし八百長問題の根が残り、フェアな土俵が保証できていない現状では、疑惑のきびしい目が一番一番に向けられることは避けられません。これでは、まじめに励んできた力士も気の毒です。
八百長問題で処分案を出した特別調査委員会の伊藤滋座長・早大特命教授は「(解明の達成度は)ゼロかな。たったあれだけの情報で(全容が)分かるわけがない」と答えました。八百長の仲介役を認めた力士らの携帯電話のメールや証言以外の証拠はほとんど出ず、設けたホットラインに寄せられた証言もありませんでした。
どうして八百長に手を染めたのか、仕組みはどうやってできたのか、過去にはなかったのか。調査委員のひとりは「彼らが急に始めた世界ではない」と口にしています。そうした根本問題に、まったくメスは入っていません。
再発防止の根本策こそ
再発を防止していくためにも、大相撲の改革に手をつける必要があります。力士の人権、指導者資格、部屋制度、年寄株、ごっつぁん体質…。力士体罰死や違法行為の横行など、不祥事を連発してきた大相撲をどう立て直していくのか。いま腰をすえて組織改革にとりくまなければ、大相撲の将来は暗いままです。
春場所中止の際、放駒理事長は「うみを完全に出し切るまでは、土俵上で相撲をお見せすることはできない」と協会としての決意を示しました。場所開催を決めたいま、その覚悟が試されます。