2011年4月6日(水)「しんぶん赤旗」
東日本大震災 被災者への住宅確保
柔軟で多様な供給を
東日本大震災で、いまだに16万人余の被災者が避難所生活を続けています。「夜もぐっすり眠れない。家族といっしょに住むところがほしい」―こうした被災者の声を受け止め、住宅を確保することは緊急の課題です。
政府は、住宅生産団体連合会(住宅メーカー団体)にたいし応急仮設住宅を3万戸供給できるように要請しています。また、全国の公営住宅、UR賃貸住宅、公務員宿舎の空き家を提供する、民間賃貸住宅の空き家を活用できるように「被災者向け公営住宅等情報センター」で情報提供をしています。
しかし、「仮設住宅に早く入りたい」との要望が強くあります。岩手県釜石市では5000戸を要望していますが、着工予定は100戸です。用地確保が難航している上、海岸沿いの被災地の近くには平地が少なく、しかも地盤沈下しています。着工のめどがついているのは、わずかの戸数にすぎません。
コミュニティー
福島県では、原発事故という目の前にある危険から避難するため、親戚縁者を頼り、県外に移転する被災者が増えています。
コミュニティーがバラバラに分断され、生活再建、復興そのものが困難になりかねません。いま必要なことは、国と被災自治体が「必ずまちを復興させる」というメッセージを示したうえで、当面する応急的な住宅確保事業を同時並行的にすすめることです。
すでに、被災地では漁業や加工水産業、関連企業を含め1万人を雇用している宮城県石巻市の日本製紙が復興の動きをみせています。
各地で避難生活を続けながら、被災者による「生活再建をめざす○○の会」が結成されています。政府・行政はこうした動きに応えて被災者を勇気付ける復興ビジョンを明らかにすることが求められます。
やむを得ず他県に一時的に居住移転する場合でも、集落単位に移転するなど、工夫を凝らす必要があります。
16年前の教訓を
この点で、16年前の阪神・淡路大震災の教訓が参考になります。
住宅確保は、避難所・応急仮設住宅・復興公営住宅という3段階の工程によって進められました。▽避難所は、プライバシーや高齢者・病弱者・乳幼児など要援護者への配慮がなく、長期生活に耐えられる空間ではなかった▽応急仮設住宅も絶対的に少ない供給数のために、入居完了まで10カ月を要し、被災地域住民がバラバラにされ、コミュニティーが崩壊し、孤独死も233人に及んだ▽復興公営住宅も抽選による入居でコミュニティーが崩壊、孤独死は応急仮設住宅から途絶えることなく、633人が亡くなった―などの問題点が指摘されています。
今回は、こうした復興過程に起こる二次的災害をなんとしても防止しなければなりません。
自宅再建の支援
そのために、応急仮設住宅についても、集落単位での建設・確保、高齢者、障がい者、病弱者に対する「ケア付き仮設住宅」の供給や自力仮設住宅建設への補助、そしてなによりも、元の土地に自宅を再建することを望んでいる被災者への支援の強化が必要です。
「被災者生活再建支援法」では、全壊でも最高300万円の支援金にすぎません。制度を改善し、支給対象の拡大、支援金の増額をおこなうことです。
阪神・淡路大震災のまちづくりは「被災市街地復興特別措置法」の制定によって上から都市計画を押し付ける“スクラップ・アンド・ビルド”大型都市開発でした。結果として被災者がもとの町に戻れず、多くの商店街がさびれています。
こうした教訓をいかし、今度こそ住民が願う地域、まちづくりの再生・復興が望まれます。(党国民運動委員会・高瀬康正)