2011年4月6日(水)「しんぶん赤旗」
公務員制度改革案を決定
協約締結権のみ、天下り温存
政府は5日、国家公務員制度改革推進本部を国会内で開き、来年度から公務員の労働条件を労使交渉で決めることなど公務員制度改革の「全体像」を決定しました。今国会に関連法案を提出します。
全体像は、警察などを除く国家公務員に給与や勤務時間などの労働条件を交渉で決める協約締結権を付与。しかし、ILO(国際労働機関)から再三、勧告を受けていた争議権付与は見送りました。
一方で、現行の人事院は廃止し、労使交渉で使用者代表となる「公務員庁」を設置。これまで第三者機関が担ってきた権能の大半を政府が握ります。交渉項目から「管理運営事項」を除くなど協約締結権を形骸化する危険性も抱えています。
幹部職員についてはさらに内閣人事局が一元化し、時の政権党いいなりの公務員づくりを進める仕組みです。
天下りについては、あっせんを廃止するだけで事実上、温存するとともに、「官民人材交流の拡大」を打ち出し、官民癒着の温床を拡大する方向です。
会合で菅直人首相は「国民ニーズに合ったサービスを提供し、公務員がやりがいを持てる制度への第一歩にしたい」とのべました。
解説
震災対策に背く「公務員制度改革」
政府が決定した公務員制度改革「全体像」は、「国民全体の奉仕者」である公務員の中立・公正性を脅かし、震災の教訓にも反して公務員の総人件費削減をねらうものです。
公務員制度改革で求められたのは、争議権を含む労働基本権の完全回復、刑事施設職員や消防職員の団結権、市民的・政治的自由の確立、非常勤職員の法的整備など、公共サービスを支える労働条件と公務員の中立・公正性を守る改革でした。
ところが、全体像では労働協約締結権にとどまりました。争議権の保障もないもとで使用者側の優位となるのは明らかであり、団体交渉にもとづいて労働条件を決める仕組みは形骸化しかねません。
しかも、公務員庁は任用など第三者機関が担ってきた権能も握ることになり、能力主義の人事評価制度と併せて時の政権党いいなりの公務員づくりをさらに進めるものです。
「天下り」もあっせんをやめるだけで温存することや、「官民交流の拡大」とともに公務員の公正・中立性をゆがめるものです。
労働基本権の回復は本来、労働者の権利と公共サービス確保が目的のはずでしたが、民主党政権は消費税増税押し付けのための“露払い”として公務員削減を掲げてきました。
しかし、公務員削減は公共サービスを低下させ、内需を冷え込ませるものでしかありません。しかも、大震災救援では公務員のかけがえのない値打ちが浮き彫りとなり、「構造改革」路線で公務員削減をすすめてきた誤りは明りょうです。この問題でも自公路線を受け継ぎ、震災対応のさなかに公務員削減をすすめることほど愚かしいことはありません。(深山直人)
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