2011年4月4日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

脱・大量廃棄社会へ

ごみをもとから出さない政策を


 焼却中心主義といわれる日本のごみ政策。政府が補助金交付の条件に義務づけてきた灰溶融炉が、故障やトラブル続きで、灰溶融炉を廃止しても、補助金を返せとはいわないという「通知」を昨年3月に出しました。ごみ問題をめぐる地方自治体の現場からと、各地でごみ問題について講演している岩佐恵美・元日本共産党参議院議員のリポートです。


灰溶融炉撤退の意味は

事故多発 高コスト CO2増

岩佐恵美元参議院議員

写真

 環境省が2010年3月19日付で、各都道府県知事に出した「通知」というのは、1997年度から04年度までに建設された灰溶融固化(焼却灰のかさを小さくするために1300度〜1500度の高温で溶かす)施設を廃止しても「補助金」を返還しなくてよいというものです。

設置を義務付け

 環境省は、ダイオキシン削減対策、最終処分場延命策などを理由に、97年度から焼却炉建設の際、「焼却灰の溶融固化施設」を必ず設置するよう自治体に義務付けてきました。

 最終処分場に余裕のある自治体や、ダイオキシン対策をきちんと行える条件がある自治体は、灰溶融固化施設の建設費が高いうえに、故障の多発による修繕費、燃料費等による高額な維持管理費がかかるため、地方財政を圧迫すると、強く批判していました。

 私は、何度もこの問題を国会で取り上げましたが、04年4月20日の参議院環境委員会で、環境省の「押しつけはやめる」との答弁があり、04年度以降、灰溶融施設の併設は強制しないということになりました。

 ところが、すでに建設した自治体は、費用がかかるのに、廃止すれば、国から「補助金」返還をせまられるとして、赤字であっても、泣く泣く施設を稼働し続けていました。10の自治体では、やむを得ず休止措置をとっていました。(東京新聞1月17日付)

 灰溶融施設は現在、全国で96カ所あり(04年度以降に建設された炉は、約30ということですが)、稼働が04年度以降でも、計画が補助金対象期間であれば、「通知」が適用されるということで、ほとんどの施設が対象になるようです。

 環境省は、灰溶融炉の廃止を認めた理由について(1)ダイオキシン対策としての溶融固化処理の必然性が低下した(2)3R(ごみを元から出さない、再利用、リサイクル)の推進により、最終処分場の残余年数が増加した(3)灰溶融固化設備の廃止によって、温室効果ガス削減に寄与する―の三つをあげています。

発生源対策急げ

 このことは、まさに、国が、「ごみは出し放題、そして、出たごみをどう処理するか」という、焼却処理中心のごみ行政が、いかに、間違っていたかということを、自ら認めたことにほかなりません。

 ごみは、燃やすことによって多大なエネルギーを必要とします。また、限りある資源の浪費にもなります。出たごみを燃やすということから、ごみをもとで出さないという政策に転換すべきです。

 そのために、発生源対策である拡大生産者責任制度(EPR)を、一日も早く確立する必要があります。


事故を機に転換

市民と協働し資源化

高知市

 高知市の新清掃工場の灰溶融炉は、2002年から稼働しました。06年4月に、炉の底から焼却灰を溶融しドロドロに溶けた、1300度のガラス質のスラグが流出する事故が発生しました。

 事故は灰の中の金属が溶融メタル(金属固化体)となってたまり、接触しているれんがの部分が侵食され、それが順次下の層へ差し込むことで起こったものでした。当初、設定した運転可能日数よりも早く侵食が進んでおり、技術と管理の未熟さと難しさを示したものといえます。

方式変えよう

 日本共産党高知市議団は、事故対策にあたっては、水蒸気爆発等の事故が各地で起こっていることを示し、安全性が確立されていないと、別の方式を採用するよう求めました。

 市も、耐火材の寿命が短く、機器更新のコストが高額なため、厳しい財政状況のもとで、どうするか困っていたようです。議会での議論をとおして、廃止へと大きく進みました。

 この背景には、高知市の清掃工場は、市直営で多くの技術職がおり、創意工夫した焼却炉の管理運営、メーカー側が提示する点検項目も自前でできるものは市で行うなど、低コストで安定的に運営されており、行政が別の方法を「自らの頭」で判断できる基盤があったからだと思います。

有料化を阻止

 また、高知市の家庭ごみ収集の有料化計画を、昨年3月に住民と力をあわせて断念させました。市議団は、住民参加で資源ごみを分別している高知市で、有料ということになると、その仕組みが壊れること、事業系ごみの減量の推進、雑がみ(新聞、雑誌、段ボール、飲料用紙パックなどを除く古紙)の資源化を提案して奮闘しました。市執行部も「有料化でなくてもごみ減量は可能」と認め、雑がみの資源化が開始されました。

 「燃やす技術」に頼るのでなく、行政が責任を持ち、市民との協働でごみ減量に努力する――そこが何より大事です。(岡田和人・日本共産党高知県委員会政策・自治体部長)





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