2011年4月3日(日)「しんぶん赤旗」

漁船も防波堤も9割が津波被害受けたが…

三陸漁業 つぶさせぬ

石巻に「復興会議」発足

「国は支援策を」

宮城・岩手で今


 東日本大震災の津波は三陸産と銘打つ魚介類を水揚げする漁港をのみ込みました。「復旧に何十年かかるか分からない」。岩手県の担当者は頭を抱えます。そんななか、漁業関係者は復興に向けて動き出しています。 (藤川良太)


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(写真)防波堤に乗り上げ、道路をふさぐ巨大な船=3月31日、岩手・大船渡市

 宮城県石巻港。長さ500メートル以上もある市場の屋根は津波で地面にたたきつけられ無残な姿をさらしています。岸壁は沈下し、一部は常に海水が染み出す状態です。

 宮城県によると、県に登録している20トン以下の漁船1万3千隻余のうち9割を超える1万2千隻が被害を受けました。石巻市で底引き網漁船の漁労長を務める男性(57)は「水揚げする場所がないし、その後もない。その上、原発で放射能汚染の風評被害が広がったら、どうしようもなくなる」と語ります。

 運送トラック業者や市場、製氷工場、冷蔵・冷凍庫を取り扱う業者など、漁業にかかわるすべてのものが軒並み被害を受けました。男性は「加工の工場も被害が出た。加工用の魚もさばかないと採算が合わない。これからどうなるのか、まったく分からない」と口にしました。

 宮城県漁業協同組合の船渡隆平専務理事は「漁業生産活動の基盤がなくなった。多くの漁師は借金を抱えていて、見通しの立たないなかで次の借金をするのは難しい。借金を取り除けば前に進める」と、国の特別な措置を求めます。

 岩手県によると、県内で操業していた漁船は1万4300隻。担当者は被害を受けずに残る漁船は「数百隻レベルになる恐れがある」とします。防波堤は県内111漁港のうち、98カ所で倒壊するなど甚大な被害となっています。

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(写真)市場の屋根は崩れ落ち海水が染み出す岸壁=3月30日、宮城・石巻市

 ワカメ、カキ、ホタテの養殖が盛んで、サンマの水揚げでも有名な同県大船渡市では、防波堤が倒壊。養殖施設はほとんど流失しました。

 岩手県の担当者は「漁港は防波堤や岸壁など50年、60年かけてつくってきた。それがゼロになったわけで、復旧に何十年かかるか分からない。地元の漁業者と協議しながらあらゆることを同時に進めていかないといけない」と話します。

 復興に向け漁業の再開は一つのカギ。しかし、被害の全容もつかめず、見通しが立たない状況が続いています。

 石巻市では3月30日に水産復興会議(代表・伊妻壮悦市漁業協同組合組合長)が発足。須能邦雄副代表は「要望をまとめて国に支援を求めていく。必ず復活したい」と語っています。





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