2011年4月3日(日)「しんぶん赤旗」
「雇用調整助成金」に望み
仕事8割なくなったが従業員守りたい
被災地の労働局に相談殺到
「仕事の8割がなくなったが、なんとか従業員を雇用し続けたい」「一人もクビを切りたくない」。いま岩手や宮城など被災地の労働局やハローワークには雇用維持を目的に「雇用調整助成金」に関する事業者からの相談が殺到しています。(行沢寛史)
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雇用調整助成金は本来、景気変動などで事業の縮小を余儀なくされた事業者が、その雇用する労働者を一時的に休業させた場合などに、賃金等の一部を助成する制度です。
今回、東日本大震災により事業が縮小した事業所にも同助成金が適用されることになりました。
「販売していた中古車すべてが流された。銀行からの融資も厳しい。しかし長い経験のある自動車整備士を解雇したくない。助成金を受けられる間に再開の見通しをたてられれば」―。宮城労働局が実施している雇用調整助成金の集団説明会。そこで寄せられた事業者の悲痛な言葉です。
ある産廃処理業者は、「施設、車両、事務所すべてが浸水した。30人の従業員がいるが、いつ復旧できるか。何カ月も給料は払えない」と硬い表情で語ります。数千万円の損害になるという酒の卸・小売業者は、「一人でも多く雇用を継続したい。助成金を受けないと、雇用を削ることになる」と雇用調整助成金に望みをつないでいます。
宮城労働局は、3月28日から雇用調整助成金の個別相談とあわせて、集団説明会を1日4回実施。労働局だけで連日300件前後の相談が寄せられ、県内のハローワークをあわせると1日600件前後に上ると見られています。リーマン・ショック後のピーク時で申請件数は月に約750件といい、担当者は「これまでにない事態だ」と語ります。
岩手労働局では、3月14日から31日までに寄せられた相談件数は合計6897件。そのうち6割以上が事業者からの雇用維持の相談だといいます。
東日本大震災により雇用調整助成金が適用されるのは、原料や部品の入手、製品の搬出ができない、燃料がなく車両を運転できない、来客の激減、風評被害などにより事業活動が縮小した場合です。中小企業では労働者に支払う休業手当の原則8割を助成します。
このほか、労働者は、雇用保険の特例措置として、離職していなくても休業による失業給付を受けることができます。