2011年4月3日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
朽ちてきたコブシと入れ替わるように、サクラが咲き始めました。一分咲き、二分咲きの清らかな風情に、ことのほか引かれるこの春です▼やはり、息をのむ光景を見続けてきたからでしょう。けれど、廃虚の町にも花の季節は巡ります。先日テレビが、東北の被災地で紅の花を開いたウメを映していました。荒れ果てた地にたつ1本のウメの木。眺める女性の顔もほころびました▼春は花盛り列島の日本が、地震列島・原発列島でもあります。政府は先日の閣議で、3月11日の東北地方太平洋沖地震が引き起こした災害の公式名を「東日本大震災」と定めました。被害は東日本の一帯におよび、津波はアメリカ、インドネシアでも人命を奪いました▼加えて原発事故。甲子園へ母校の応援にかけつけた知人は、大阪のホテルは原発から逃れて避難してきた人でいっぱいだった、といいます。四国の知人は、ペットボトルの水を探すのに一苦労。水道水が汚染された首都圏にすむ家族に送ろうと、人々がいっせいに買い求めました▼四国の住民の関心は、津波をともなう南海地震への備えにも集まります。全国で、町から村から地域から、福祉・防災の国づくり。安全を最優先する原子力行政へ、自然エネルギー中心へと切り替える。そこへ向かって前進したい、ことしの春です▼東京の高尾山頂で満開のころ、サクラ前線は青森辺りに達します。金子兜太(とうた)さんの、東北の地と花と人間が一体となった名句が胸に迫ります。「人体冷えて東北白い花盛り」