2011年4月3日(日)「しんぶん赤旗」
米軍、原発対処に重心
原子力政策への影響懸念
日米両政府は2日までに、東日本大震災で米軍が行っている「トモダチ作戦」の規模を縮小し、被災者支援から福島第1原発事故への対処に重心を移す方針を固めました。その背景には、原発推進を掲げるエネルギー政策への影響を懸念するオバマ米政権の強い危機感があります。
はしけを接岸
在日米海軍は3月25日、横須賀基地(神奈川県)に所属するはしけ船2隻に真水約190万リットルを積んで海上自衛隊に貸与。31日午後、福島第1原発に接岸し、1日には、ろ過水タンクへの移送を行いました。
津波で外部電源が切れ冷却機能を失った原子炉を冷却するため、日本政府は緊急措置として海水を注入しました。しかし、日本に派遣されている米原子力規制委員会(NRC)などから、海水を入れれば内部で塩分が結晶し、熱を出している燃料棒を覆ってしまい冷却効果が薄れる可能性や、塩分による機材の腐食が指摘されていました。真水はいっさいの不純物を含まないため、冷却効果が高いとされています。
推進かわらず
米国は1979年のスリーマイル島原発事故以来、商業利用での原発の新規建設を停止していました。しかし、ブッシュ前政権は原発推進へかじを切り、オバマ政権もこれを継承。3月30日に発表された新たなエネルギー政策でも、「次世代原子炉の設計・建設にあたり、原子力規制委員会による既存炉の安全点検と日本の教訓を組み入れている」と述べ、原子炉新設を表明しました。
しかも、今回事故を起こした福島第1原発の1号機は米GE(ゼネラル・エレクトリック)社が建造したものです。当時、設計に加わった東芝の元技術者が、「1号機は、そもそも津波を想定しない設定条件だった。2号機以降は日本で建設したが、1号機の設定がそのまま踏襲された」と証言しているように、GE社モデルの構造的な欠陥が指摘されています。
今回の事態が収束されなければ、米原発業界にも重大な打撃になることは必至です。
ただ、思惑はどうであれ、原発事故による被害を受けている地域では、「世界のすべての英知を結集して原発を抑えてほしい」(菅野典雄・福島県飯舘村長)というのが切実な思いです。現時点では放水・注水以外に原子炉の冷却方法がない以上、さらなる策を講じる必要があります。(竹下岳)