2011年4月2日(土)「しんぶん赤旗」

志位・菅会談での「原発見直し」発言

内外に広がる衝撃と波紋


 日本共産党の志位和夫委員長が3月31日の党首会談で、菅直人首相に、政府が掲げている14基以上もの原発の新増設計画を中止するよう求めたのに対し、菅首相が「白紙というか、見直しも含めて検討したい」とのべたことが内外で大きな反響を呼んでいます。


エネルギー政策「変わる兆し」

地方紙軒並み1面トップ

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(写真)会談する志位和夫委員長(左)と菅直人首相=3月31日、首相官邸

 「首相 原発新設を白紙化」、「原発増設は白紙に エネ計画見直しへ」―北海道新聞、山梨日日新聞、京都新聞、中国新聞、四国新聞、高知新聞など1日付の地方紙各紙は軒並み1面トップで、志位氏と菅首相の会談で原発新増設見直し発言がでたことを報じました。全国紙も「首相、原発計画『見直し』」(毎日)「原発増設見直し検討 首相表明」(朝日)と1面で報道しました。

 会談で、志位氏は東日本大震災の被災者支援・復興とともに、安全最優先の原子力行政への転換と、エネルギー政策では原発依存から自然エネルギーへの戦略的転換を提起。とくに、政府が昨年6月に策定した「エネルギー基本計画」で2030年までに14基以上の原発を新増設するとしたことについて「到底、国民の理解は得られるものではない。きっぱり中止すべきだ」と求めました。

 これに対し、菅首相は「いまある原発の総点検ももちろん必要だが、今後の原子力の利用について根本的に安全性の議論が必要だ」と表明。原発新増設計画については「白紙というか、見直しも含めて検討したい」と答えたのです。

 菅首相のこの言明は、「原発の新増設を前提にしたエネルギー政策を政府が抜本的に転換する可能性が高まった」(「毎日」)、「国内最悪の原発事故を受けてようやく『非現実的』と言われ続けてきた原発頼みの日本のエネルギー政策が変わる兆しが出たことを意味する」(共同)など、日本のエネルギー政策の転換につながるものと受け止められています。

 実際、海江田万里経済産業相も、1日の閣議後会見で「エネルギー基本計画」について「見直しは当然」と表明しました。

「日本の大幅修正余波大きい」

海外でも報道

 ニュースは海外にも波紋を広げています。ニューヨーク・タイムズ(米)、ヘラルド・サン(豪州)、タイムズ・オブ・インディア(インド)の各大手紙やロイター(英)、AP(米)、AFP(仏)、PTI(インド)、新華社(中国)などの通信社、フランスの週刊誌『ル・ポワン』なども会談を報じました。

 この動きが世界から注目されるのは、福島原発事故が「原発大国」の米国やフランスに衝撃を与え、「世界3位の日本の事故が原発不信の波を広げ、自国の原子力政策に影響しかねないと懸念」(「朝日」)が広がっているからです。ニューヨーク・タイムズは共同電を引いて、「菅が日本は2030年までに14基を建設するとの計画を見直すべきだという点に同意したとの、日本共産党幹部・志位和夫の発言」を紹介。韓国紙ハンギョレは「菅直人日本総理が、原子力発電所の増設計画を全面白紙化する可能性を表明した。2030年代には北東アジアが最高の原発密集地帯となることが予想されるなか、日本が原発増設計画を大幅修正すれば、その余波は大きいだろう」としています。

「基本計画」は「無謀で危険」

志位氏、昨年3月に表明

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(写真)原発新増設を明記した「エネルギー基本計画」を批判した志位氏の会見記事=2010年3月22日付本紙

 志位氏が党首会談で見直しを迫った「エネルギー基本計画」は、エネルギー政策基本法にもとづき、自公政権時代の2003年に策定され、07年と民主党政権になってからの2010年6月に改定されたもの。

 10年の改定では、原発を「供給安定性、環境適合性、経済効率性の3Eを同時に満たす中長期的な基幹エネルギー」と位置づけ、2030年までに「少なくとも14基以上」の新増設をおこなうことや、08年度で約60%の設備利用率を約90%に引き上げることなどを明記しています。また、使用済み核燃料を再処理して回収されるプルトニウムなどを利用する「核燃料サイクル」の推進もうたっています。

 志位氏は、この計画の概要が報道された段階で記者会見(昨年3月21日、福井市)し、自公政権時代の目標を上回る計画について、「原発は技術的に未確立で安全性が確保されておらず、放射能汚染という深刻な環境破壊をもたらす」「わが国が有数の地震国であることにてらしても、原発大増設の計画は無謀で危険極まりないもの」ときびしく批判しました。

 また、稼働率の引き上げについても「老朽化した原発を酷使し、事故につながる危険なもの」と反対を表明しました。

 このように、日本共産党は策定当初から一貫して「基本計画」を批判し、エネルギー政策の転換を提起してきました。原発の「安全神話」や、それにもとづく大量立地を批判してきた党ならではの追及でした。こうした追及と住民とむすんだたたかいが、今回の事故を契機に、日本のエネルギー政策の抜本的転換の「兆し」をつくりだしているのです。

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