2011年4月1日(金)「しんぶん赤旗」

原発の危険を告発 国民の命守る日本共産党(上)


 深刻な被害を広げつつある福島第1原発事故は、安全に根本的な欠陥をかかえる原子力発電所の大量増設をすすめてきた日本の原子力政策を厳しく問うものとなっています。日本共産党は、原発大量増設が開始された当初から、原子力行政の根本的な転換を歴代政権に要求し、住民とともに増設計画に反対してきました。この問題での日本共産党の立場と主張は、重大化しつつある今回の原発事故に対し国を挙げ安全対策をとるうえでも、また今後も原発事故を繰り返させないためにも、重要な問題提起となっています。


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(写真)北陸・近畿圏の地図を示し原子力発電の危険について質問する不破哲三書記局長(当時)=1980年2月1日、衆院予算委員会

“安全神話”を厳しく追及

不破氏 原子力は本来、危険はらむ未完成の技術

1976・80年

 日本の原子力行政の最大の問題は、“核燃料が大量に拡散するような重大事故が起こることは考えられない”という「安全神話」を基礎としていることにあります。こんな「安全神話」に固執して狭い国土のほぼ全域にわたって原発の大量増設を推進してきた国は、日本以外には世界のどこにもありません。

 1976年1月、日本共産党の不破哲三書記局長(当時)は、「原子力は本来、危険性をはらみ、未完成の技術だ」と指摘。そのため「原子力開発に取り組むには、今日の技術が許す限りの安全体制をとらねば非常に危険なことになる」という根本問題を指摘していました。

 当時、政府は4900万キロワット、約50基分の原発大量増設計画を開始。日本共産党は安全最優先の立場から、無謀な原発大量増設計画に反対してきました。

 79年には、深刻な炉心溶融を起こした米国・スリーマイル島原発事故が発生。不破氏は80年2月の国会で、米国が大統領令で設置した「大統領特別調査委員会」(通称「ケメニー委員会」)の「勧告」をとりあげました。

 不破氏は、アメリカが重大事故から学んだ一番の教訓は「原発は十分安全だという考えがいつのまにか根をおろしてしまった。これが失敗を招いたのだ」ということだったと指摘。同勧告が「原子力は本来、危険をはらんでいるということを口に出していう態度に変わらなければならない」と訴えていることを示したうえで、不破氏は「原子力は大丈夫」だという「安全神話」の立場を「信念」として推進しようとしている日本の原発行政の根本的な危険を明らかにしました。

 一方、原発を推進する立場の関係者(いずれも当時)は、スリーマイル島原発のような事故は「日本ではほとんど起こりえない」(吹田徳雄原子力安全委員長)、原発の緊急炉心冷却装置は「オーバーデザイン(過剰な設計)」(有沢広巳原子力産業会議議長)などと、相変わらず「安全神話」の立場からの発言を繰り返してきたのです。

 日本共産党の志位和夫委員長は、3月23日の全国決起集会で「こんどこそ『安全神話』を一掃し、原子力の持つ本来的な危険性について国民に正直に語り、政府が国民の安全確保のために万全の体制をとる、正直で科学的な原子力行政へと転換することを、わが党は強く求める」と述べました。

震源域への大増設 中止せよ

不破氏「民族的な安全が危機に瀕する」と指摘

76・81年

 日本共産党は、日本列島全域に大量の原発を建設する計画の中止を求め、住民とともにたたかってきました。

 不破氏は76年の国会質問で、原発大増設計画が推進されるなら、「日本国民の民族的な安全が危機に瀕(ひん)する」と厳しく警告しました。81年2月の質問では、現在深刻な危機を引き起こしている福島原発をはじめ、女川(宮城県)、柏崎刈羽(新潟県)、浜岡(静岡県)、伊方(愛媛県)、福井、島根などの原発が、いずれも大地震の想定震源域や活断層の真上にあることを示しました。「こんな危険な地盤の上に原発をつくろうとする国は、世界のどこにも例がない」と批判した不破氏は、計画の撤回と既存原発の全面的な安全総点検を求めました。

 この日本共産党の主張に対し、政府と電力会社は、原発の耐震性の若干の改善や核燃料輸送容器の耐久性強化など部分的な改良を進めましたが、震源域での原発増設にあくまで固執してきました。

 しかし、2007年の中越沖地震で火災などの重大事故を起こした柏崎刈羽原発(現在も三つの原子炉で運転停止中)に続き、今回の大地震では福島第1原発で重大事故を起こし、女川原発でも復旧のめどが立たない被害を受けています。まさに、日本国民を“民族的な危機”に直面させる事態を招いています。

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(写真)質問する吉井英勝議員=2006年3月1日、衆院予算委第7分科会

大津波・電源喪失 ともに警告

吉井議員 冷却不能指摘し対応迫る

2006・10年

 日本共産党は「安全神話」に反対し、既存の原発の危険性をただすために全力で取り組んできました。

 今回の福島第1原発の重大事故は、地震と大津波によって、冷却機器とその電源設備が破壊されたことによって引き起こされました。この二つの危険を、ともに国会で追及してきたのが、日本共産党の吉井英勝衆院議員でした。

 5年前の2006年3月1日の質問(衆院予算委員会第7分科会)。吉井氏は、大津波を引き起こしたチリ地震(1960年5月)、スマトラ沖地震(2004年12月)、明治・三陸地震(1896年6月)にふれながら、波の高さが10メートルを超え、明治・三陸地震では38メートルの記録があることを指摘。巨大津波を想定した対策を提起しました。

 巨大な“押し波”による原発機能の破壊とともに、吉井氏がこの質問で強調したのは“引き波”の影響。長時間の大規模な海面低下で冷却水の取水ができなくなり、炉心の冷却機能が喪失して、最悪の場合には炉心溶融を引き起こし、燃料棒の崩壊熱を除去できなくなる危険を明らかにしました。「どんな場合にも、チェルノブイリ(原発事故)に近いことを想定して、対策をきちんととらなければいけない」と吉井氏は要求したのです。

 これに対し広瀬研吉原子力安全・保安院長(当時)は「必要な海水を取水できるような設計をされている」「原子炉を冷却できる対策が講じられている」と、対応を拒否しました。

 吉井氏が、電源喪失の危険を追及したのは昨年5月26日の衆院経済産業委員会の質問。外部電源、非常用の発電機(内部電源)の破壊が「巨大な地震が起こると、同時に発生することが起こりえる」と提起。「自家発電や外部電源の喪失で二次冷却系が機能しなくなって炉心溶融に至ったときにはどれだけの規模の被害が発生するか、こういうことを検討しておくことが必要だと思う」と早急な備えを求めていました。

 いずれの質問も、今回の福島第1原発の危険性を予見し、対策を求める質問でした。

 東日本大震災後、日本共産党の大門実紀史参院議員の質問に対し、菅直人首相は、津波の影響について「認識が結果として間違っていたことは否定しようがない。予測が低すぎて、原発建設以前のチリ地震の基準を満たしていないとすれば相当問題だ」(3月29日)と答弁。“安全神話”に深くはまり込んだ政府と電力会社の対応が今回の“人災”を引き起こしたことを認めました。

図

(写真)浜岡原発は東海地震の想定震源域の真上にある。廃止ずみ原子炉は省略。特定観測地域と観測強化地域は地震予知連絡会が定めたもの(全国的な観測網の整備のため現在は廃止)。





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