2011年3月31日(木)「しんぶん赤旗」
屋内退避 物資なき「籠城状態」
福島第1原発から20〜30キロ圏内
政府は責任持った対処を
深刻な事態が続く福島第1原発から20〜30キロ圏内では、住民に対して「屋内退避」要請が出されています。大部分は30キロ圏外に自主避難しましたが、残った人も南相馬市や田村市、いわき市などで2万人以上に上ります。しかし、生活物資が途絶え、「籠城状態」(桜井勝延・南相馬市長)になっています。
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南相馬市では、30キロ圏外に自主避難していた住民の一部が「屋内退避」圏に戻ってくるようになりました。
21日に営業を再開した大手警備会社の支店は、「市内の30キロ圏外に避難していたが、電話回線と電力が復旧したので通常業務を再開した」と言います。
「屋内退避」とはいえ、買い物などの日常生活での移動はかまわない、というのが政府の見解です。
しかし、生活用品を扱う店舗や飲食店のほとんどは閉鎖したままで、市内では食料や日用品がまったく手に入りません。従業員の自主避難に加え、放射能汚染を恐れて、業者が市内に入ってこないからです。
全国チェーンのレストランの従業員は、「一刻も早い再開をめざしているが、『屋内退避』のため本部が食材を届けてくれない」と言います。
郵便物が届かず
郵便局は閉鎖しており、郵便物や宅配便は一切届きません。
市民は隣接する相馬市まで買い出しに行きます。市は移動に不可欠な石油を、市内の業者が茨城県までタンクローリーを取りに行って確保するなど、必死の努力を行っていますが、スーパーはどこも長蛇の列で、食料品はたちまち品切れになります。
桜井市長は「今、住民が戻ってきてもわずかな物資を奪い合うだけだ」と嘆きます。
商業活動の停止
枝野幸男官房長官は25日、「屋内退避」区域の住民に自主避難を呼びかけました。「商業、物流等に停滞が生じ、社会生活の維持継続が困難となりつつある」ことを理由に挙げていますが、そもそも「屋内退避」を要請されたからこそ、住民は商業活動の停止を余儀なくされ、物流も途絶えたのです。
福島第1原発の事故に対する対処の根拠になっている原子力災害特措法は、政府が被災者の救援・救助などに加えて、食糧や医療などの確保を行う責任があると定めています(第26条)。政府は自ら「屋内退避」圏を設定した以上、生活物資の確保に全力を尽くすべきです。
同時に、放射線の濃度が強まり、危険な状態だと思われるのであれば、一刻も早く20キロ圏内と同様、「避難指示」に切り替えるべきです。(竹下岳)
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