2011年3月31日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 55分間の1人劇。公開中の映画「レイチェル・カーソンの感性の森」は、つつましい体裁の中に、かけがえのない一瞬一瞬をつむいでゆきます▼主演のカイウラニ・リーさんは18年間、舞台の1人芝居でレイチェル・カーソンを演じてきました。米メーン州の海辺にたつ別荘。1962年に『沈黙の春』を著し、農薬の環境汚染を告発したカーソンは、ここで遺作の『センス・オブ・ワンダー』を書いている▼やがて彼女の命を奪うがんの病、『沈黙の春』を葬り去ろうとする化学会社とたたかいながら。大資本の圧力に屈しない言葉が、人間の気高さを感じさせます。そして、ともに暮らすおいの少年と海や森の自然に親しみながら▼作家で海洋生物学者の彼女は、海のゆたかさをあきずに書き続けました。「月はゆっくりと湾のむこうにかたむいてゆき、海はいちめん銀色の炎に包まれました。その炎が、海岸の岩に埋まっている雲母のかけらを照らすと、無数のダイヤモンドをちりばめたような光景があらわれました」▼『センス・オブ・ワンダー』(上遠恵子訳)の一節です。海。生命を生み、育む海。海の水は時折、津波となって人の暮らしを破壊します。けれど、人間にめぐみをもたらす海には違いありません。いま、そのゆたかな海を福島原発の放射能が汚しています▼カーソンは、農薬だけでなく放射性物質の汚染の危険についても警告を発した人です。とりわけ、未来に生まれる世代にたいする科学者の責任はきわめて重大だ、と。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp